[フィリピン] 2020年不動産市場のトレンド

2020/04/21

[フィリピン] 2020年不動産市場のトレンド



世界経済に影響を及ぼすさまざまな事態で幕が開けた2020年。新型コロナウィルス(Covid-19)流行の影響や世界の株式市場の下落にもかかわらず、フィリピンの不動産業界は楽観的だと、不動産サービス会社サントス・ナイト・フランクは予想しています。

同社は、2020年の不動産業界を形作るトレンドとして次の7つを挙げています。


1.REITの年

2020年1月にREIT法の規制緩和が発表されてから、不動産投資信託(REIT)への関心を表明する不動産会社が増えてきています。大手アヤラランドが、子会社REITであるAREITを証券取引委員会に届け出、ダブルドラゴン・プロパティーズも6年間にわたって年間110億ペソ(約233億円)をREITを通じて資金調達する計画を発表しています。

サントス・ナイト・フランク会長兼CEOのリック・サントス氏は、「REITは、フィリピン不動産市場を民主化する重要なオポチュニティをもたらします。小規模の投資家でも、大手の機関投資家とともに、高価な不動産投資に参加することができます。REITは、投資を通じてフィリピン経済の長期的な成長を支える力を持っています。」と話しています。

サントス・ナイト・フランクの投資・資本市場アソシエート・ダイレクターのカシュ・サルバドール氏は、REITは今後フィリピン全体の不動産活動の増加を促すと予想しています。REITが生む資本により、不動産市場はメトロマニラの枠を超えて拡大し、多くの職を生み出すでしょう。


2.医療、アニメーション、ゲーム開発がBPO業界の成長をけん引

サントス・ナイト・フランクは、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)企業がメトロマニラ内で拡大しようとする一方で、長期的にはメトロマニラ外にも広がっていくのではと考えています。

「2020年、PEZA(フィリピン経済区庁)の認可オフィススペースに限りがあるものの、BPOの需要は堅調だと見込んでいます。BPOの需要が最も高いのばボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)とパサイ・シティで、賃料は今後も上昇する見込みです。反対に、オルティガスとケソン・シティは、供給が需要を上回りそうなので、空室率が上がり、賃料は横ばいとなるでしょう。」とサントス・ナイト・フランクのテナントサービス&商業エージェンシー部門シニア・ダイレクターのモーガン・マクギルブレー氏はコメントしています。

iBPAPとEverestの共同リサーチによると、BPO産業は今後も、年間で3~7%の成長を遂げるオフィススペース需要における最大のけん引役となると見られています。2019年から2022年にかけて、医療、アニメーション、ゲーム開発の分野で特に雇用の増加が見られそうです。


3.マニラ圏を越えて広がるコワーキング

近年、フィリピンはコワーキングブランドが急増しています。WeWork、Spaces、Common Groundなどの国際的な事業者とともに、UnionSpaceのAcceler8やアヤラランドのClock In、ロビンソンランドのWork.ableなどが拠点を構えています。加えて、多くのコワーキングスペースブランドが単一のテナントによって賃貸されています。

コワーキングスペースは、メトロセブでも増えています。サントス・ナイト・フランクはオフィス市場の3%程度がコワーキングスペースで、セブITパーク、セブ・ビジネスパークおよび周辺の特定の建物に広がっていると見ています。

この需要をけん引するのは、フリーランサーやスタートアップ企業や事業主、そして「プラグ・アンド・プレイ」(コンピュータをつなげばすぐに使用できる状態)の環境が急きょ必要となったBPO企業などです。


4.サスティナビリティ(持続可能性)への新たな注目

不動産業界が環境に与える影響についての認知が増すにつれて、グリーンなデザイン、ソリューションおよびシステムに目を向ける不動産オーナーが増えています。建物の建設・運営にかかるLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)認証などがその例です。

今のところ、フィリピン全体で300棟以上の建物がLEEDガイドラインを実施しており、うち半数はLEED認証を受けています。オフィススペースを選定する際の要件にLEEDを加えるテナントが増えるにつれ、供給も増加してきました。

LEED認証を受けた建物は、環境のためになるだけでなく、物件の位置づけをプレミアム側に持ってくることができます。サントス・ナイト・フランクは、LEED認証を受けたBGCのオフィスビルは、LEED認証を受けていないビルと比較して、平均して12.5%ほど賃料が高く設定できていると明かしています。


5.工業・物流不動産がマニラ外に成長の場を求める

フィリピンの堅調なEコマース市場は、倉庫や配送センターのニーズの増加とともに、工業・物流不動産の成長に油を注いでいます。

サントス・ナイト・フランクは、工業・物流不動産の次の成長の波はメトロマニラ外で来るだろうと予想しています。サルバドール氏は、「カラバルソン地方や北ルソンのNLEx-SCTEx-TPLEx高速道路帯などが、物流・工業不動産の成長に欠かせない重要なスポットです。これらのエリアは、配送センターや倉庫の次のハブとなりうるでしょう。」と話しています。


6.プライムレジデンシャルはやはりマニラが熱い

マニラのプライムレジデンシャル市場は、2019年世界的に最も高い成長率を記録したエリアの一つで、ナイト・フランクのプライム・インターナショナル・レジデンシャル・インデックスでは、6.5%増となりました。マニラは成長率において世界第8位、アジア第3位となっています。

マニラのプライムレジデンシャル市場の成長を促したのは、高級/ハイエンド不動産の供給がタイトなことに加えて、超富裕層のフィリピン人の増加と外国人バイヤーによる需要があります。

2019年第4四半期には、8つのレジデンシャルプロジェクトが立ち上がりました。これには、アヤラランドのガーデンコート・レジデンシーズ(Gardencourt Residences)、アルベオランドのパークフォード・スイート・レガスピ(Parkford Suites Legazpi)、フェデラルランドと日本の野村不動産、三越伊勢丹の合弁によるザ・シーズンズ・レジデンシーズ(The Seasons Residences)のナツ(Natsu)タワー*があります。

今年の初旬には、ロビンソンズランドとホンコンランドによるハイエンド開発、ザ・ベラリス・レジデンシーズ(The Velaris Residences)、ロビンソンズランドとDMCIホームズによるソノラ・ガーデン・レジデンシーズ(Sonora Garden Residences)、アヴィダ・タワーズ・パークリンクス(Avida Towers Parklinks)の3プロジェクトが立ち上がる予定です。


7.コリビングスペースとマイクロスタジオの登場

メトロマニラの渋滞のひどさから、コリビングスペースが中央業務地区(CBD)内やその周辺で働く従業員や若い専門職にとって最も実行可能なソリューションとなってきています。というのも、高額なアパートの賃料を払ったり、コンドミニアムを購入したりする必要がないからです。

多くのデベロッパーが成長するコリビング分野に乗り込んでいます。SMグループによるマイタウン(My Town)、アヤラランドによるザ・フラッツ(The Flats)などの主要プレイヤーは、CBD内やその周辺に拠点を構えています。フィリンベストによるドルミコ(Cormiko)、ゼンヤ・ロフト(Zenya Lofts)、ザ・クリブ(The Crib)の新しいユニットも投入予定です。

他にもさまざまな形でアフォーダブル(手ごろな価格)な住まいが導入されようとしています。この代表的なものが、マイクロスタジオです。コリビングのように複数の入居者が入るモデルではなく、マイクロスタジオのアパート賃貸はプライバシーを必要とするテナントのためのものです。マイクロスタジオは平均11平方メートル程度で、アボイティスランド(AboitizLand)とポイント・ブルー(Point Blue)が、メトロマニラにおけるマイクロスタジオ分野をリードすべく、2019年10月にパートナーシップを締結しています。

(出所:The Manila Times

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