2020/07/24
[ベトナム]経済成長に向けて最大級の商業プロジェクトを承認
ベトナムはここ数年で最大級の商業物件を承認しました。政府はコロナウィルスの流行から経済を復活させるべく、1月以降公共・民間投資のペースを維持しようとしています。
グェン・スアン・フック首相は、2020年6月中旬、ベトナム最大の民間コングロマリット、ヴィングループ(Vingroup)による93億ドル(約9,905億円)のツーリストリゾート物件を承認しました。外国企業も投資に参加し、ここ数年で最大級の投資になるとみられています。
このプロジェクトは、ホーチミンシティ中心から南へ50キロ、海岸沿いのカンゾ県にあり、2031年完成予定となっています。
▼ホーチミン市カンゾ県
民間団体、地元のメディアや環境活動家などが、ホーチミンシティを空気と水の汚染から守ってくれている「グリーン・ラング(緑の肺)」と呼ばれる生物圏保護区へのリスクを訴えたため、ヴィングループは政府の承認を何年も待つ結果となりました。専門家によると、この保護区が商業の中心地であるホーチミンシティを嵐やその他の海からの自然災害から守る働きもしていると述べています。
プロジェクトに承認が下りたことは驚きでした。ベトナム共産党の政治局は、昨年8月にベトナムの気候変動政策の見直しを承認した際、環境アセスメントと経済開発プロジェクトの承認プロセスの改善の必要性を強調していました。また、フック首相も「環境を経済成長とは交換しない」ことを約束していました。
しかし、パンデミックによりベトナムの経済の主要なドライバーである観光業と輸出は縮小。これが、大規模プロジェクトの早期決定に拍車をかけたようです。
2020年1月から4月のベトナムの輸出額は994億USドル(約10兆円)で、前年比1.7%減となりました。宿泊施設およびケータリングサービスの売上は25.8%減、旅行関係の収入は54.1%減となりました。政府は、海外市場の緩やかな回復やコロナウィルス感染の第二波など、今後起こりうる課題にも備えています。
国際通貨基金(IMF)は、今年のベトナムの経済成長率を2.7%に引き下げましたが、ハノイ市は5%超の成長率達成を目標にしています。
ベトナム共産党政治局は、5月下旬に政府に対して、パンデミック状況下でも経済成長のペースを維持すべく、国内のあらゆるリソーセスを使うようにと訴えました。国内の社会経済の発展にスピルオーバー効果をもたらすような、大規模かつ重要なプロジェクトを直ちにスタートすべきだとしています。
ヴィングループのプロジェクトは、2020年前半期にハノイ市がゴーサインを出した主要投資のひとつです。他には、メコン・デルタ地域の2.08億ドル(約222億円)高速道路、ビンフォック省の5,200万ドル(約55億円)の工業団地、北部の省における総額1.3億ドル(約138億円)の3つのゴルフコースなどがあります。
南北高速道路に関連する8つのプロジェクト、総工費44.7億ドル(約4,760億円)は、4月に、官民パートナーシップから、完全公共投資に切り替えられました。
ヴィングループのプロジェクトは、2000年に発表されたもので、敷地面積600ヘクタール、カンゾ・ツーリスト・シティのサイゴンツーリスト部門により管理をさせることになっていました。2016年に部門の持分97%を取得したヴィングループは、プロジェクトを2,870ヘクタールへとスケールアップし、グループ傘下のヴィンホームズを開発に参加せることにしました。
プロジェクトへの承認がおりた数日後の2020年6月16日、ヴィングループは、アメリカのプライベートエクイティファンドKKRとシンガポール政府系投資機関テマセック・ホールディングスが率いるコンソーシアムから6.5億ドル(約693億円)の投資を受け取り、ヴィンホームズの持分6%を売却したと話しています。ヴィンホームズの2019年の財務諸表によると、ヴィンホームズは、カンゾ・ツーリスト・シティの99.9%持分を所有しています。
環境アクティビストは、今回の承認はパンデミックの陰にすっかり隠れてしまったと言います。専門家は広範囲な埋立てを行うことで、環境に多大な影響を与え、その影響は北はホーチミンシティからメコン・デルタ地域にまで及ぶだろうと述べています。埋め立て工事には、1.38億立方メートルと砂を必要とすると予想されており、砂はメコン・デルタ地域の川底から採取されることになっています。この量は、オリンピックサイズのプール36,600個分に相当します。
このプロジェクトは昨年地元で大きな波紋を呼び、当局側は決定を下す前に話し合いを重ね、詳細の調査を行うと約束していました。
(出所:Vietnam Insider)
(トップ画像:Photo by Q.U.I on Unsplash )
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