[ベトナム] 工業不動産、世界的な不安感の中、投資家の注目を集める

2019/09/27

[ベトナム] 工業不動産、世界的な不安感の中、投資家の注目を集める


米国と中国の貿易摩擦が激化し、不動産投資家の関心は東南アジアの国々に向けられています。ベトナムの工業不動産がその焦点の一つです。貿易摩擦に明確な終わりが見えないこともあって、関心は高まる一方でしょう。


「現在の米中貿易摩擦により、企業がサプライチェーンを東南アジアの国々に変更しようとしていることから、評論家たちはベトナムがその恩恵を受けるだろうとしています。」とJLLベトナムのキャピタルマーケット部門のシニアダイレクター、カン・グエン氏は言います。

ベトナムの計画投資庁によると、外国直接投資(FDI)は2019年前半期で91億USドル。前年から8%増となりました。新規に登録されたプロジェクトは総額で74.1億USドル、前年から63%増となりました。

地政学的な不安定要素は、投資増のたった一部です。自由貿易協定(太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)およびEU-ベトナム自由貿易協定(EVFTA)もまたポジティブにとらえられています。一方で、消費財への需要が、増加する中所得層と豊富な労働力により弱まることもなさそうです。

「ベトナムの堅調な成長は、若い人口と中所得層の割合の大きさに加え、高まる国内消費といったファンダメンタルズに下支えされています。」とカン氏は言います。「製造業がっ今年の重要な成長のけん引要素となっています。」


製造業のシフト

工業および物流資産が、米国の輸入関税を避けるため、中国から製造拠点をシフトしようとする会社が増えるにつれて、関心を集めています。ベトナム南部の工業用地の平均価格は、リース物件で平米あたり95USドル、昨年から15.8%増となっているとJLLはレポートしています。

「投資家は積極的に、地元のデベロッパーとの合弁事業に乗り出したり、土地銀行や運用資産の取得に乗り出しているとカン氏は言います。「ベトナムの高い生産性と安い労働力により、今までも工業不動産への需要は確実にありました。しかし、米中貿易摩擦により、企業は移転に迫られているのです。」

シャープはベトナムに新工場建設を発表、アメリカの靴メーカーであるBrooks Runningも、中国から生産拠点を南の隣国であるベトナムへ移転しようとしています。

アップルのサプライヤーであるFoxconnもまた、ベトナムでのプレゼンスを高めてきています。2月に地元の部品メーカーの工場使用権を取得したのち、7月にはメーカーを買収しています。中国の製造業でさえもベトナムを考慮に入れています。海外進出を検討している調査対象となった中国企業33社のうち、70%近くがベトナムを拠点として選んでいると、Nikkei Asian Reviewが報じています。

一方で、ベトナム進出を遂げた製造業の中には、十分なスキルを持った労働者や、中国にあったような、十分かつ洗練されたサプライチェーンを見つけることの難しさをこぼしています。カン氏はまた、より多くの製造業がベトナムに逃げるにつれ、インフラが追い付かないかもしれない可能性について注意を促しています。

「ベトナムの多くのインフラプロジェクトが、土地の補償と資金繰りを理由に遅延しています。より多くの外国投資を呼び込み、参入してくる企業の利益を高め、時代を先取りするためには、ベトナムはインフラネットワークとクロスボーダー取引の改善が必要になってくるでしょう。」

(出所:JLL