[ベトナム] モダンワークプレースの新時代

2018/10/23

[ベトナム] モダンワークプレースの新時代



フレキシブルスペースは、従来のコンセプトである間仕切りのある仕事スペースから離れ、協力関係を築くだけでなく、入居費用を減らすべく、短期から中期のリースを通じてポートフォリオの柔軟性を高めるために入居者が使用する、様々な仕事スペースを表わしています。

フレキシブルスペースの中でも最も流行なのが、主にコワーキング施設とビジネスセンターで、両カテゴリーとも現在その提供サービスの内容をアップグレードし、共有スペースと個室の調和を目指したハイブリッドモデルを提供しています。興味深いことに、コワーキング施設が最近とくに個室を売りにする一方で、ビジネスセンターは徐々に共有ワークスペースへとシフトしてきています。

ホーチミンシティで特に目立っているコワーキング・オペレータに、Toong(トゥーン)、Dreamplex(ドリームプレックス)、Circo(サーコ)、Workyos(ワーキュオス)、UPがあります。同様に、人気のあるビジネスセンターオペレータには、Regus(リージャス)、Kloud(クラウド)、CEO Suites(CEOスイート)などがあります。


需要と供給

最初のビジネスセンター、Regusが営業を始めたのは1999年にさかのぼりますが、ベトナムのフレキシブルスペース市場はまだ初期段階にあります。2016年頃シンガポールで始まったアジアパシフィックのフレキシブルスペースブームに乗って、ベトナムにおけるフレキシブルスペースの供給も2017年から急増、多くの国内オペレータがオフィスをオープンさせました。

図1:東南アジアにおけるフレキシブルワークスペースの浸透率

(出所:JLL社見積もり)

2018年以降、ベトナム市場は、多くの外国フレキシブルスペースオペレータ、たとえばKloudやCEOスイート、Executive Centre(エグゼクティブセンター)とWework(ウィーワーク)などを迎え入れてきました。

国内オペレータと海外オペレータの間には、スペースの要件に関して相違があります。国内オペレータがグレードB以下のオフィスビルにフレキシブルスペースを設置する傾向があるのに対し、海外オペレータは彼らの商品の品質に見合ったよりグレードの高いビルを求めます。

現在、フレキシブルスペースの需要は主に、一時的なスペースを求める企業だけでなく、短期かつフレキシブルなリース条件を好むスタートアップ企業から来ています。


オポチュニティ

ベトナムにおけるスタートアップ企業のコミュニティは急成長しています。その理由は、民間と政府主導プログラムからの資金増だけでなく、経済の見通しがポジティブなことが挙げられます。JLL社は、この好都合な市場ファンダメンタルズが今後も続き、フレキシブルスペースの需要も将来上向きになると見ています。

フレキシブルスペースは、イノベーション(革新)とコラボレーション(協力)に重きを置いた、仕事のパターンを変えることへの答えだとみられています。さらに、内装費用をシェアすることでかかるコストを抑え、設備やアメニティを活用できることから、従来のコンセプトと比較すると、企業にとってはより安く、よりフレキシブルなスペースの選択肢を与えてくれます。


課題

ホーチミンシティ内のグレードA、グレードBオフィスに限りがあること、今後の供給量が少ないことを考慮すると、オペレータは、ショップハウスや新築のリテールスペースなどを、フレキシブルワークスペース設置の代替案として検討する必要があるでしょう。

さらに、コワーキングオペレータの中には、テナントを引き留めるのが難しいと考える者もいます。規模の大きいテナントが中期、長期リースにアップグレードする一方、短期リースのテナントの新しい物件へ移動する傾向があるのです。もしかすると、コミュニティの確立が解決のカギとなるかもしれません。ワークプレイスの利用者が、コラボレーションがプラスになると考え、他の利用者とのコネクションを作ることができる限り、彼らが新しい物件に流れる可能性は低くなるのです。

(出所:JLL