[ベトナム] 国内オフィス市場、外国企業の需要さまざま

2021/05/25

[ベトナム] 国内オフィス市場、外国企業の需要さまざま


グローバル不動産サービスプロバイダー、サヴィルズによると、ハノイとホーチミンシティで、日本と韓国それぞれの入居企業によってオフィス需要が異なる傾向があることがわかりました。


韓国企業は、ベトナム市場に参入する際に、ハノイにオフィスを構えたり、地域本社を構えることを優先しています。韓国ビジネスコミュニティにかなり依存した形になっているようです。


韓国企業が賃貸するハノイのオフィススペースは全体の60%ほどで、ホーチミンシティよりも多くなっています。実際、サムスングループが、ベトナムで最大の投資額を誇る韓国企業です。ハノイの東北にあるバクニン省とタイグエン省にある二大生産・開発技術センターに力を入れています。


一方で、ベトナムに参入する日本企業は、多くの場合、製造業をターゲットにします。


日本企業のハノイ、ホーチミンシティにおけるオフィススペース需要は似た傾向にあり、両市場における事業ポテンシャルが同等であることを表しています。


ハノイおよびホーチミンシティのオフィステナントについてサヴィルズが行った調査によると、2021年第1四半期時点で、この2つの市場とも賃貸用のオフィススペースを独占する主要な業種が入っていることがわかっています。これらの業種には、金融、保険、不動産、製造、そして情報技術(IT)などがあります。


ホーチミンシティは、最大の経済都市と考えられており、多国籍企業は本社を構えるのにホーチミンシティを選ぶことが多いようです。


一方で、ベトナム企業は、ハノイにオフィスを開くことが多いようです。ハノイのオフィススペースに占めるベトナム企業が46%なのに対して、ホーチミンシティは35%でした。


サヴィルズ・ハノイの商業リース担当ダイレクターのホアン・グエット・ミン氏は、ハノイのオフィス供給は現在、膨大な需要に応えられていないが、それでも高品質で専門の管理をしてくれるオフィスビルの中で選択肢があると述べています。大企業、IT&テクノロジー企業、もしくはスタートアップ企業は、柔軟な賃貸オプションを求めて、ハノイの西部またはダウンタウンのグレードAオフィスを探すのが良い、と提案しています。


サヴィルズ・ホーチミンシティの商業リース担当ダイレクターのトゥ・ティ・ホン・アン氏は、ホーチミンシティでは、需要の高さから、2区、7区、トゥドゥック区といったエリアで、今後オフィスビルの開発が進むと予測しています。


しかし、これらのエリアはまだホーチミンシティの中で新しいビジネス街を形成しきっていないので、テナント企業がグレードAオフィスを探そうとすると、1区が最初の選択肢となるのだとアン氏は述べています。


ハイエンドオフィスは、多くの場合、大都市でも主要エリアに集中してきました。ハノイのホアンキエム区、ホーチミンシティの1区などです。しかし、土地が限られていること、中心部での不動産開発コストがかさむことから、オフィス不動産のデベロッパー各社は、中心地の外にオフィスプロジェクトを移したり、拡大したりするようになっています。


サヴィルズによると、このような変化がハノイでは10年前、ホーチミンシティでは2年前くらいから起こっており、ハノイではホアンキエム区、都心エリア、西部を含む3つのグレードAオフィスの集まる中心地が形成されているということです。


ミン氏は、「このような変化は賃料にプラスの影響を与えました。10年前は、これらの新しいエリア(都心エリアと西部)では、テナント企業を集めるために賃料を下げる必要がありましたが、今では安定して成長してきています。」と述べています。


「これらのエリアの賃料はビジネス街ほど賃料が高くありませんが、それなりの利益を享受しており、ビルの品質も非常に良いのです。よって、これら2つの新しいビジネスエリアのグレードAオフィスの需要は高く、ホアンキエム区よりも高いほどです。」


一方で、アン氏は、ホーチミンシティのオフィス供給は、従来のビジネス街ではないエリアに増えてきていると言います。2023年まで、ホーチミンシティはグレードAオフィススペースの新規供給はない計画ですが、将来、ハノイのようにグレードAオフィスが集まる新しいビジネスエリアが形成されるだろうと述べています。


2021年第1四半期末、ベトナムのオフィス市場は前向きな回復の兆しを見せてきた、とサヴィルズは述べています。


ハノイでは、2020年第4四半期から2021年第1四半期までに、キャピタル・プレイス、タイホールディングス・タワー、リードバイザーズ・タワーといったプロジェクトを通じて品質の高い供給がありました。


2023年までに、ハノイでは、バーディン区(都心エリア)およびコーザイ区(西部)に新しいグレードAプロジェクトが建設される予定で、ハノイのグレードAオフィスの平均賃料は、平米当たり月々35~37ドルにまで上昇する見込みです。


ホーチミンシティでは、企業の需要が供給を上回ると見られており、グレードAオフィスの賃料は年間3%ほどで上昇を続けると見られています。


(出所:Vietnam News

(画像:Image by Richard Xu from Pixabay)