[ベトナム]不動産市場2021年回復の光

2021/02/12

[ベトナム]不動産市場2021年回復の光

2020年のベトナム不動産市場は、世界中の他の地域と同様に、Covid-19パンデミックの影響を大いに受けました。しかし、2021年に入り、市場に光が見え始めており、ウイルスの封じ込めに成功すれば、復活し活発な市場を取り戻すことができそうです。


専門家によると、ベトナム不動産市場が、去年ほどさまざまな難題を一気に抱えた年はなかったと言います。一方で、市場は、徐々にその難題に適応し、オポチュニティをとらえようとしています。



パンデミックで不動産ゲームが変わる

Covid-19により、ベトナム不動産市場は多くの難題に直面しましたが、パンデミックそのものが触媒となり、新しい投資家を呼び込む新しい投資分野を発達させた形で市場を再形成しました。


グリーンエッジ・デベロップメント&グロウス(Green-Edge Development and Growth JSC)のジェネラル・ダイレクター、チャン・ヌー・チュン氏は、市場のトレンドとして、従来の市場への投資の関心が薄れ、衛生都市・郊外エリアへと投資の波がシフトしていることを挙げています。


オンラインプラットフォームbatdongsan.com.vnでの個人投資家の国内主要都市の検索結果の動きを分析した結果として、従来市場への需要が著しく減少していることが分かったといいます。大きいときでは、60~70%の減少が見られたようです。


このような従来市場への需要が減少したことについて、当局による新規プロジェクト承認遅れにより供給が非常に限定的になっていること、デベロッパーが新規プロジェクトの立ち上げに慎重になっていることがあげられます。


ベトナム北部では、バイヤー・投資家の関心は、6つの省(クアンニン、ハイフォン、バクニン、ホアビン、フンイエン、ヴィンフック)に集まっているようです。南部では、7つの市と省(ビンズオン、ドンナイ、バリア-ヴンタウ、ロンアン、ビンフォック、カントー、キエンザン)に検索が集中しました。


不動産デベロッパーもまた、大きな土地が残っている都市の郊外部へと移る動きがあるようです。ハノイでは、この動きが紅河の反対側まで広がっており、ホーチミンシティでは、ビンチャイン県やトゥードゥック区が最もホットなスポットとなっています。


ホスピタリティ不動産

コロナウィルスで最もひどい打撃を受けたセグメントの一つ、ホスピタリティ不動産は、明確になった法的機能としっかりと練られた計画をもった複数のプロジェクトを従え、回復への準備を整えています。


専門家によると、ホスピタリティおよびセカンドホーム部門は、はっきりとした法的な枠組みに欠けていたことから、2019年末から大幅に減少していました。そこに2020年出現したコロナウィルスが、観光・ホスピタリティ部門が直面していた課題に拍車をかけた形となりました。


しかし、2020年第4四半期より、数々のプロジェクトの準備が進められ、今年早い段階で発売される予定となっています。


デベロッパー各社は、クアンニン、ダナン、ニャチャン、フーコックといった従来の観光市場ではなく、ファンティエット、クイニョン、フーイェン、ビントゥアン、バリア-ヴンタウ、中央高原地帯、イェンバイ、ホアビン、ハイフォンと言った、高いポテンシャルを持ちながらも、観光開発が進んでいないようなエリアでの開発を進めており、大規模デベロッパーにより様々なプロジェクトに投資がされています。


エコノミストのディン・チョン・ティン氏は、ホスピタリティ部門への投資にはまだ慎重な姿勢が見られると言います。しかし、「慎重だからといって、魅力がないわけではありません。デベロッパー各社はプロジェクトをより注意深く選択しています。必要な法的書類の整った、しっかりと計画されたスキームだけがバイヤーの関心を集めることができるのです。」とティン氏は述べています。さらに、他との差別化を図ることができるユニークな特徴を備えたプロジェクトが必要だと強調しています。


工業不動産が熱い

パンデミックの間も、工業不動産市場は、賃料、稼働率両方で、最もポジティブな結果を見せました。


2020年、GLPやLOGOSなどの世界的な倉庫業大手がベトナムに参入、各地に投資をしました。


工業不動産はさらに、今まで住宅開発しか行っていなかったような、国内不動産デベロッパーの関心も集めました。


ヴィングループは最近、工業不動産に参入、2つの工業団地(Industrial Zone)が今年オープンを迎える予定です。


ファット・ダット・リアルエステート・デベロップメント(Phat Dat Real Estate Development JSC)は、工業不動産開発のため、当初資本金6,800億ドン(約31億円)の子会社を設立しました。


ホア・ファット・アーバン・デベロップメント&コンストラクション(Hoa Phat Urban Development and Construction Corporation)は、ホア・ファットグループ系列で、北部のフンイエン省に工業団地を設立するために、地元の当局からの承認待ちをしているところです。


2020年第4四半期時点で、北部の主要な工業都市・省(ハノイ、バクニン、フンイエン、ハイズオン、ハイフォン)の既存の工業団地の平均稼働率は89.7%に達し、CBREベトナムによると前年同期比で2.1%増となっています。


同様に、南部の4つの主要工業都市・省でも、稼働率は87.0%となり、前年同期比2.5%増でした。


中国からの生産移管に加え、自由貿易協定の締結により、工業用地の需要はベトナム全土で高まっています。Eコマースおよび物流会社がパンデミックが始まって以来力強い成長を見せており、倉庫スペースおよび配送施設の需要を押し上げました。


2021年の供給着々

政府および地方当局の努力により、より多くの不動産プロジェクトが2021年に手続を完了し、飢えた市場に新しくプロジェクトを供給できるようになりそうです。オフィスビル、ショッピングセンターといった収益を生む不動産を所有するオーナーは、割安な価格で取引をしなくてもよいでしょう。


投資家にとっては、中心業務地区の5つ星ホテル、商業センター、グレードAビルなどが、安定的な収入を提供してくれるでしょう。収益率は以前ほど高くなく、現在は年間6~7%となっていますが、それでも投資するに値するとサヴィルズ・ベトナムは述べています。


2021年は、遅延していたものも含め新しいプロジェクトが複数発売予定で、住宅セグメントが沸くとみられています。これらのプロジェクトには、The Spirit of Saigon、Soho Residences、Sunshine Venicia(ホーチミンシティ)、Mipec Rubik、360、The Matrix One、Golden Park Tower(ハノイ)などがあります。


オフィス、商業センター、サービスアパート、ホスピタリティ部門は、依然として厳しいものも、デベロッパー各社はポートフォリオを再編し、様々な戦略で対応しています。


ベトナム不動産協会のグエン・チャン・ナム会長は、政府とデベロッパー各社は、商品やソリューションだけでなく、サプライチェーンの改善も行い、パンデミックの封じ込めが出来たときのテナントの需要に対応できるように、より効率的ならなければならないと述べています。



グローバルブランドのレジデンス分野への参入

有名グローバルブランドのレジデンスがベトナム市場に参入してきています。さらなるレベルのラグジュアリーある暮らしを提供する、代替のレジデンシャル商品への高まる需要の中、ブランドレジデンスはベトナム市場に大きなオポチュニティをもたらすでしょう。


マリオット・インターナショナルは、国内のマスタライズ・ホームズと提携し、マリオット、JWマリオット、リッツカールトンといったグローバルブランドのレジデンスを、ベトナム不動産市場に導入しようとしています。


マリオット・インターナショナルの中国を除くアジア太平洋地域プレジデント、ラジーヴ・メノン氏は、ベトナム市場のめざましい成長が有名ブランドの目に留まったと話しています。


ブランドレジデンスは、ブランドの付加価値を提供し、所有者のエクスペリエンスを高めるという点において非常に魅力的です。ブランドを取り入れることで、高質なデザイン、安全性、そしてハイレベルなサービスを提供することができます。ブランドレジデンスの参入は、世界のラグジュアリー不動産マップにベトナムの存在を刻むという点においても、国としての重要なマイルストーンとなっています。


(出所:Vietnam Investment Review

(トップ画像:Photo by Tran Phu on Unsplash )