2022/03/01
2022年1月6日、ベトナム政府は、2014年不動産事業法の施行規則にかかる政令Decree2/2022を発出しました。Decree 2/2022は、2022年3月1日から施行され、Decree 76/2015に取って代わることになります。
Decree 2/2022で主に変更になった点を見ていく前に、まずは2014年不動産事業法のおさらいをしてみましょう。2014年不動産事業法では、特に、不動産購入者の保護のための対策が盛り込まれました。
・不動産購入者は、購入した不動産の正式な所有権証書(通称「レッドブック」)を手にするまで、契約金額の5%を留保できる。また、デベロッパーは、引き渡し日から50日以内にレッドブックが発行されるようにしなければならない。
⇒契約代金を受け取っておきながら、何年もレッドブックを購入者に引き渡さないデベロッパーに対応。
・開発中の住宅物件の販売する場合、開発期間中、デベロッパーは契約金額の70%(外資デベロッパーの場合50%)まで受領できる。
・不動産は、購入者から受領した前払い金返還の義務のために、前払い金返還にかかる銀行保証を、承認を受けた金融機関から取り付けなければならない。
・不動産取引のための契約ひな形の導入。
・不動産デベロッパーは、購入者と直接契約を結ぶこととし、他社にその権限を付与できない。
⇒売り手を名乗る偽者に対応。
・不動産デベロッパーが開発中の物件を販売できるのは、建設当局から承認を得たあと。
・開発中の物件の購入者は、物件の引き渡しが終わっても物件の転売が可能。ただし、レッドブックの発行申請が提出されていない場合に限る。
⇒以前は、引き渡しが終わったら、物件の売買契約は終了したものとみなされて譲渡不可だった。しかし、そのタイミングでは、通常レッドブックはまだ発行されていないので、合法的に転売することが不可能であった。
次に、今回変更になった部分を見ていきましょう。
新しい定義
Decree 2/2022では、2014年不動産事業法で頻出するも、あいまいだった法律用語の定義を定めています。例えば、販売に供する不動産、不動産プロジェクト、不動産取引のための契約にあたる用語です。新しく定義が導入されたことで、2014年不動産事業法とDecree 76/2015の規定の解釈に、より一貫性がでるようになります。
不動産デベロッパーによる開示要件
Decree 2/2022に基づくと、不動産デベロッパーは不動産プロジェクトについて、複数の開示をしなければならなくなります。特に、次のような情報が、デベロッパーのウェブサイト、本社のプロジェクト管理ボード(不動産事業を行う投資プロジェクトのとき)、または不動産立会場(証券取引所の立会場を通じた不動産事業を行う場合)にて、開示されなければならなくなります。
不動産デベロッパーの過小資本にかかるルール
Decree 2/2022では、不動産デベロッパーがプロジェクトを実行する際に自己資本が過度に小さい状態「過小資本」にならないように規制しています。Decree 2/2022に基づくと、不動産デベロッパーは、20ヘクタール未満の土地を使ったプロジェクトの場合は、総投資額の少なくとも20%に相当する自己資本を、20ヘクタール以上の土地の場合には、総投資額の少なくとも15%の自己資本をもっていなくてはなりません。
この要件は、不動産プロジェクトのデベロッパーとして選出され、政府から土地を賃貸する投資企業の財務能力にかかる、2013年土地法の施行規則となるDecree43の要件を拡大したものと言われています。Decree 2/2022の要件は、土地使用権の発行元にかかわらず、すべてのタイプの不動産デベロッパーに適用されるようです。例えば、他のデベロッパーから土地を転借する不動産デベロッパーも、この要件に従わなくてはならないようです。
Decree 2/2022には、デベロッパーが自己資本の要件を満足しているかどうかの判断基準についても明記されるようになりました。
デベロッパーが既存の法人である場合、当該デベロッパーの自己資本は、当年度または前年度に作成された、最新の監査済みの財務諸表、または最新の独立監査報告書の結果に基づいて判断されます。
デベロッパーが新規設立法人の場合、当該デベロッパーの自己資本は、法律に基づき設立発起人が出資した実際の資本金となります。
不動産にかかる取引の契約ひな形
Decree 2/2022では、同政令に添付されている契約ひな形に従って、不動産にかかる取引を行うことを求めています。Decree 2/2022では、次のようなタイプの契約ひな形が用意されています。
以前、Decree 76/2015では、不動産取引のための契約ひな形の利用をするかどうかは自由で、契約当事者は、署名済みの書類に法律で定められた全ての重要事項が含まれてさえいれば、契約ひな形に手を加えることができました。一方、Decree 2/2022では、2022年3月1日以前に署名された不動産契約は引き続き有効としていますが、それらの契約を改定する場合にはDecree 2/2022に添付された契約ひな形を使用しなければいけないかどうかについては明確ではありません。
Decree 2/2022に基づく同様の規定がないために、既定の契約ひな形に沿っていない契約は法律上無効となるのかどうかも明確ではありません。というのも、2015年民法では、民法上の取引が成立するのに、規定の契約ひな形を使用することは必須条件とはなっていないからです。とはいえ、Decree 2/2022では、もし契約当事者が法的手続きを完了するために署名済みの契約書の提出を求められたときに、規定の様式に沿って作成されていない取引書類を当局が拒否する可能性があることを示しています。
契約当事者による契約ひな形の一部修正や変更が認められていない限り、この契約ひな形にかかる新しい要件により不動産デベロッパーが事業を行う上で大きな制約を課すことになります。
不動産の売買、購入オプション付き賃貸借の譲渡契約にかかる条件
Decree 2/2022では、オフプランの住宅の売買(Sale and Purchase)または購入オプション付き賃貸借契約(Lease and Purchase)、および既存の建設工事の購入オプション付き賃貸借契約の譲渡にかかる新しい条件も加えています。主なものには次のような条件があります。
上記の契約の購入者が別の不動産デベロッパーであるとき、この購入する側の不動産デベロッパーは、地方住宅公団に書面で当該契約の移転を通知しなければいけません。この通知には、不動産プロジェクトの名称・所在地、契約の譲渡人、譲渡の対象となる契約数、譲渡される契約に基づく住宅および建物の数の情報が含まれていなくてはなりません。
不動産プロジェクトの譲渡にかかる手続き
Decree 2/2022に基づくと、不動産プロジェクトの一部または全部を譲渡する場合、次のような2つの別個の法的手続きが必要になることがあります。
Decree 2/2022に基づき不動産プロジェクトの譲渡に関して、Decree 2/2022は、譲渡する側が、不動産プロジェクトの譲渡を申請する際に、当局に次のような追加の書類を提出するよう求めています。
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