2020/12/17
[フィリピン]世界銀行:経済は今年収縮、今後2年で回復
2020年12月8日に発表した「フィリピン経済アップデート」で、世界銀行は、フィリピンを襲った、コロナウイルスによる公衆衛生上の脅威を含む複数のショックにより、今年の経済は8.1%収縮するものの、パンデミックの封じ込めに徐々に改善が見られることと、今後起こりうる世界経済のリバウンドが、2021年、2022年の復活を助けそうだと述べています。
現在の景気見通しは、世界銀行が10月に発表した予測-6.9%からの見直し版で、第3四半期の収縮-11.5%と、11月の台風および洪水によりフィリピンが被った大きな損害・損失を考慮しています。
「パンデミックとの戦いを続ける一方で、フィリピンを襲った一連の自然災害が、災害リスク削減と気候変動適応策を政策計画に組み入れることの重要性を浮き彫りにした」と、世界銀行ブルネイ、マレーシア、タイ、フィリピンのカントリーダイレクター、ンジャム・ディオプ氏は指摘しています。「フィリピンは財政的にレジリエントで、より強力な調整・実行が、たびたび起こるショックに耐えうる社会的、物理的なレジリエンスをさらに高めるだろう」と述べています。
台風「ロリー」「シオニー」「ユリシーズ」が、11月の2週間もの間に立て続けにフィリピンを襲ったことで、ルソン島の広範囲に壊滅的な被害がもたらされ、今年の経済成長見通しを暗くしました。
国内の経済活動は、隔離措置と世界的な景気後退により凍結状態となり、過去数年改善した貧困削減によるゲインを一時的に後戻りさせ、2020年の経済を収縮させることにつながりそうです。
一連の自然災害が起こる前、2020年の第1~第3四半期の時点ですでに、国のGDPは10%収縮し、1985年の経済危機以降最悪となっていました。民需の下落、投資活動の激減、そして輸出低迷が原因となっています。
フィリピン経済の3分の2を占める、民間の消費活動もまた、高まる失業率と所得の減少により記録的なペースで下落しました。
世界銀行のレポートでは、パンデミックと自然災害が、近年順調に減少してきた貧困のトレンドを逆戻りさせる恐れがあると述べられています。
2020年8月に実施された新型コロナウィルス(Covid-19) の影響モニタリング調査では、調査対象となった家庭の40%が所得の減少を報告しています。企業所得もまた減少が報告されており、特に非農業関連事業で顕著だったということです。
多くのフィリピン家庭のライフラインである、海外からの送金は、調査によると、海外からの送金を受ける家庭の5世帯に2つで減少が報告されています。
結果として、貧困は2019年の20.5%から2020年は22.6%に増加したと推定されています。この基準となっているのは、世界銀行の低中所得国貧困ラインである日当たり3.2USドル(約330円)です。
レポートではまた、ウイルスの感染封じ込めに継続的な改善があることを前提として、フィリピンは今後2年間で回復する予想であるとも述べられています。
政府は、徐々に産業界に対してオペレーションの再開を許可しており、仕事と所得が復活し、民間消費を刺激することになりそうです。これもまた、経済が2021年には5.9%、2022年には6.0%へと立ち直ることを助けそうです。
パンデミックに対応する一方で、フィリピンは政府は構造改革にも引き続き注力していくべきだ、と世界銀行のシニアエコノミスト、ロン・チアン氏は話しています。「ビジネス環境を改善し、競争を高め、自然災害に対する回復力を強化するような改革を加速させることが、長期的な経済回復と生産性の向上につながるでしょう。」
現在、レポートで発表されている予測値は、中国の早期回復、輸出の回復を助ける2021年の世界経済回復、そして内需を刺激する海外からの送金額の増加とセットになっています。
政府は、2020年第4四半期でインフラ支出を増やしており、建設業界での職の創設を促すことが期待されています。
2022年の大統領選の準備段階での選挙前活動もまた、早ければ2021年の後半期から、需要をさらに刺激することになりそうだとも予測されています。
(トップ画像:Photo by Krisia Vinzon from Pexels)
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