[マレーシア] 世界銀行:ワクチンの展開でマレーシア経済は2021年に回復

2021/02/26

[マレーシア] 世界銀行:ワクチンの展開でマレーシア経済は2021年に回復


世界銀行グループは、ワクチンの展開が徐々に進み、世界的に消費が刺激されることで、マレーシアの経済成長も、2021年は、他の国々と足並みをそろえてプラスに転じるだろうと述べています。


世界銀行のマクロ経済、貿易、投資などを担当するリードエコノミストのリチャード・レコード氏は、ほとんどの経済圏でワクチンの接種が2021年内にほぼ完了すると予想しており、それが力強い回復と需要だけでなく、貿易や物価の刺激にもつながると述べています。


「今年の世界経済については4.0%成長を予測しています。マレーシアについては、今年の経済成長は、5.6%から6.7%の間でしょう。」と、2021年2月22日に行われた、「Covid-19後のニューノーマル - これからどこへ向かうのか」と題されたバーチャルの2021年マレーシア経済・戦略見通しフォーラム(Malaysia’s Economic and Strategic Outlook Forum (MESOF))で述べました。


レコード氏は、マレーシアを含むアジア諸国の成長の理由となっているのが中国であるとも述べています。


しかし、マレーシア経済に貢献する消費の割合について触れたうえで、成長の下振れリスクとして、ワクチンの展開が予定通りに進まない可能性、新しいコロナ封じ込め策として再び活動制限令が実施される可能性なども挙げています。


「成長見通しのリスクには、ワクチン展開の遅延、コロナ封じ込めの効果薄、影響を受ける低所得世帯の増加、国内の政情不安定などがあります。」


「短期的には、感染の封じ込めと、コロナの影響を最も受けやすいグループの保護、そして経済状況の改善とともに、財政上のバッファーを再建することに政策を集中させていくべきでしょう。」


同じくパネリストの一人であった、ジュワイIQIグローバルのチーフエコノミスト、シャン・サエード氏は、マレーシア政府はマクロ経済の安定化を着実に進めていると述べています。


「政府は、経済をよく制御できており、必要な場合には、さらなるサポートをするでしょう。財政政策と金融政策のてこを合わせることが、経済成長のカギを握っており、マレーシア中央銀行は、金融政策面でやりくりする余裕があります。」


シャン氏は、マレーシア中央銀行が、戦術的・戦略的な方法で、通貨の構造的な安定化を図るだろうと述べています。


レコード氏と同様、シャン氏もまた、マレーシア経済は中国の総循環戦略にならって、国内ビジネスをサポートし、マクロレベルでの総需要を底上げしてくるだろうと予想しています。


シャン氏が行った統計によると、ブレント原油は1バレル50USドルから70USドルで取引される予想で、リンギットが1USドルあたり3.67~4.10リンギットで取引されるのを助けるだろうということです。



▼マレーシアリンギット/USドル為替レート推移(出所:xe


国内総生産(GDP)については、シャン氏はやや控えめで、3.0%~4.0%あたりに留まると見る一方で、中央銀行の翌日物の政策金利については、2021年は1.0%から1.75%のレベルをキープすると予想しています。


マレーシア統計局のモハメド・ウジール・マハディン主席統計官は、2021年のマレーシアの経済見通しについて、世界的な貿易・サプライチェーンの回復の結果、輸出が2.7%伸びることで、対外貿易の成長率を3.9%、輸入は全体的に改善して、成長率5.3%を予測しています。


「Covid-19のパンデミックにより物・サービスの需要が抑えられた結果、デフレ傾向にありましたが、2021年はインフレも戻ってくる可能性があります。」


「これは、コロナウイルスのための安全かつ効果的なワクチンが早期に展開されること、そして、供給不足とあわさって、溜まった需要が表面化することで、インフレ方向に働くでしょう。」


財務省の発表によると、インフレ率は2.5%と予想されています。2020年は-1.13%でした。消費者支出の力強い増加が伺えます。


労働市場について、ウジール氏によると、パンデミックによりぱっとしなかった2020年から一転して、2021年は国の経済が着実なリバウンドを遂げるにつれて、失業率も2020年の4.5%から2021年は3.5%に減少すると予測されています。


▼マレーシア失業人口と失業率(出所:マレーシア統計局
棒グラフ:失業者数、折れ線グラフ:失業率


(出所:Malay Mail

(トップ画像:Photo by Alex Block on Unsplash