2021/09/06
ダウンサイドリスクが高まる中、強固な経済ファンダメンタルズを保つベトナムは、2022年以降にはパンデミック前の成長率6.5%~7%に戻るだろうと、世界銀行のベトナム担当ダイレクター代理のラフル・キツル氏は述べています。
世界銀行は、2021年のベトナムのGDP成長率を4.8%と予測、2020年12月に行った前回の予測から2ポイント下げました。
今回の予測は、世界銀行が年二回行っているベトナムの経済アップデート「“Digital Vietnam - The Path to Tomorrow"(仮訳)デジタルベトナム - 明日への道」と題されたレポートの中で示されたものです。直近のCovid-19感染流行および政府がパンデミック封じ込めのために採用した活動制限に関連した経済への痛手に焦点を当てています。
世界銀行は、ベトナム経済が、2021年前半期には力強く5.6%拡大したが、4月末からほとんどの省に広がった国内のCovid-19感染を含む、深刻な内外のリスクに直面していると述べています。ベトナム経済は、回復性を持ちながらも、ワクチン接種がなかなか進まない中、感染拡大を封じ込めるために徐々に制限が強化されたことで影響を受けてきました。
2021年7月には、リテール販売が前年同期比で19.8%減となり、2020年4月以来最も大きな下落となりました。購買担当者景気指数(PMI)も同様に大きく落ち込みました。広い地域でCovid-19感染が再増加したことで、工業団地およびサプライチェーンに混乱が起こり、工場を一時的に閉鎖したり、生産を遅らせたりしなければならなくなった輸出業者があったようです。
対外的には、ベトナムはプラスの対外ポジションを維持しました。外貨準備は増加、しかし商品貿易と経常収支は悪化しました。輸入が輸出を越えた一方で、サービス収支は、ほとんどの外国からの訪問者に対して国境を封鎖していることで、マイナスの影響を受けました。2021年1月~7月の累積海外直接投資(FDI)は、2020年同時期と比較して11%下がったということです。
ベトナム国立銀行は緩和的な金融政策を継続、政府はより中立的な財政スタンスへと戻りました。預金残高は15%ほど拡大、2020年の10~12%から上昇し、影響を受けた企業にはありがたいバッファーとなりました。しかし、この政策は、金融業界へのリスクが高まることにもなりかねません。
ラフル・キツル氏は、「ベトナム経済が2021年後半期で立ち直るかどうかは、現在のCovid-19感染の統制、有効なワクチン接種、そして影響を受けた企業や家庭を支援するため、また回復を刺激するための財政措置の効率にかかっています。」と述べています。
「ダウンサイドのリスクが強調された一方で、ベトナムの経済ファンダメンタルズは強固な状態を保っています。2022年以降は、パンデミック前のGDP成長率6.5~7%レベルに終息するでしょう。」
レポートでは、当局に対して、社会保障プログラムの範囲と効果を改善することで、Covid-19危機が社会に与える影響に対応すべきだと提言されています。また、金融業界におけるリスク増に目を光らせ、経済の回復を支援するニーズと、公的債務を持続可能なレベルいに保つ必要性との適切なバランスを見つける必要があることから、財務政策にも注意を払っていくべきだとも述べられています。
経済の最近のトレンドを分析することに加えて、今回のレポートでは、世界で最も発達したデジタル経済のひとつとなる、というベトナムの野心を達成するためには何が必要かということに焦点を当てています。ますます多くのベトナム企業がオンラインでサービスを提供するようになり、Covid-19危機により国内経済のデジタル・トランスフォーメーションは加速してきています。政府もまた、手続きやデータベースのデジタル化を強化しています。
世界銀行のレポートでは、ベトナムを含む世界のほとんどの国にとって、デジタルに強い国になれるかどうかは、技術革新を遂げる能力で決まるのではなく、他で開発されたデジタル技術を最大限に活用する能力で決まると主張されています。
(出所:Vietnam Plus)
(画像:Photo by fabio on Unsplash )
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