2022/10/17
世界銀行は、フィリピンの今年のGDP成長率予測を上方修正しました。背景として、力強い消費の回復を挙げています。
世界銀行が2022年9月27日に発表したレポート「東アジア・太平洋経済アップデート2022年10月(East Asia and the Pacific Economic Update October 2022)」で、世界銀行は、フィリピンの今年のGDP成長率を、今年4月の予測5.7%から上方修正して6.5%としています。
フィリピン政府は、今年の成長率目標を6.5~7.5%と置いていますので、世界銀行の予測は政府の目標幅の下限にあることになります。
世界銀行の東アジア・太平洋地域担当チーフエコノミストのアーディトヤー・マットー氏は、GDPの上方修正を行った主な背景として、「域内の多くの国々と同様、フィリピンにおける民間消費の力強いバウンスバック」を挙げています。マットー氏はまた、今年5月に行われた選挙関連の支出に後押しを受ける形で、官民ともに投資が復活しており、輸出および観光も改善していると述べています。
世界銀行のGDP成長率予測では、フィリピンはベトナムの7.2%に次いで東アジア・太平洋地域で2番目に高い成長率を達成する予測となっています。
フィリピンの今年前半期の成長率は7.8%、昨年は5.7%でした。
2023年と2024年について、世界銀行は平均5.8%の成長を予測しています。
来年以降の予測も、前回の予測である2年間平均5.6%を超えていますが、政府の目標6.5%~8%を下回る形になりました。
世界銀行は、2023年から2024年になると、繰延需要の効果は薄れるものの、インフレは高止まりし、財政の余地に限りがあることから公共投資が減速することで、成長の勢いが緩やかになると見ています。
総合インフレ率は8月に6.3%を記録し、7月の6.4%からわずかに減速しました。食料および輸送価格の上昇率が緩まったことが背景です。
今年の1月から8月の平均インフレ率は4.9%で、政府の目標幅である2~4%を超えています。
世界銀行は、「経済成長は立ち直ってきているが、インフレの脅威がこれらのゲインを侵食する可能性があります。食料およびエネルギーが、貧困層の世帯支出の約70%を占めることから、急激な価格上昇は、彼らの購買力をむしばむことになりそうです。」と述べています。
世界銀行はさらに、ロシアによるウクライナ侵攻が長引けば、市場の不確実性を高め、投資見通しを
先進諸国の景気後退が予想より進むと、フィリピンの輸出も影響を受けかねません。さらに、国内の農業生産性が低いことから、食料安全保障に課題が出てくる可能性があります。
世界銀行は、「気候に関連する自然災害は、人命にも人々の暮らしにもリスクとなり、政府には追加の財政コストがかかることになるかもしれない」と述べています。
(出所:Philstar)
(画像:UnsplashのREY MELVIN CARAANが撮影した写真)
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