[フィリピン] 2020年の政府のインフラ支出は当初より増加

2020/06/23

[フィリピン] 2020年の政府のインフラ支出は当初予想より増加



政府の2020年のインフラ支出は削減されますが、国の信用格付けのため重要な、来年期待される景気回復に向けた足固めのため、当初予想されたほどは削減されない予定です。


2020年5月27日付の最新の見積もりでは、ドゥテルテ政権の今年の設備投資額は7,751億ペソ(約1.7兆円)で、昨年の1.05兆ペソ(約2.2兆円)から26.2%減となりそうです。


しかし、今年の設備投資額は、5月12日時点での予想7,251億ペソ(約1.5兆円)からやや高い状態となっています。対GDP比では、設備投資額は、当初の3.8%から増加して4%となっていますが、昨年の5.4%からは下がる形になっています。


インフラ投資に回す資金を増やすことで、今年の財政赤字が広がりますが、少なくとも信用格付け会社フィッチ・レーティングスは現在のパンデミックの状況を考えれば、許容できる範囲だと述べています。対GDP比の赤字上限も、5月12日時点の予想8.1%から、今年は8.4%に到達する予想となりました。


フィッチ・レーティングスのソブリン格付けアソシエート・ダイレクターのサガリカ・チャンドラ氏は、今回発表された数値について単に政府が最近発表したものよりやや高いというだけで、この時点では、信用格付けや格付け見通しに関する見方を変更することはないと話しています。


政府主導で行われたロックダウンの真っ最中だった5月8日、フィッチはフィリピンの信用格付けトリプルBの見通しを、今後2年間に引き上げの可能性を示唆する「ポジティブ」から、「ステーブル(安定的)」に引き下げました。


「ステーブル」の見通しは、今後2年間で格付けに動きはなさそうであることを意味しています。信用格付けは、Aを最高として、債務支払い能力を測定するものです。フィリピンの信用格付けが高くなれば、外国から低金利で融資を受けやすくなります。


財政赤字や債務の「段階的な削減」以外にも、チャンドラ氏は、経済成長のリバウンドが、フィリピン政府の今後の信用力の動きを決定づけると言います。


ドゥテルテ政権が大幅削減をしなかったこのインフラ支出により、来年のGDP成長率は最大9%の回復が見込まれています。チャンドラ氏は、最終的には、パンデミックから経済がどのくらい早く抜け出せるかにかかっていると言います。


5月12日時点の予想から増加したのはインフラ支出だけはありません。2021年の予算案は、今年の4.1兆ペソから、来年は4.34兆ペソとなっており、主要なインフラ機関、公共事業、運輸省のインフラ支出が増加しています。


GDP比での財政赤字は、2020年の8.4%から、2021年には6.6%、2022年には5%に下がる計画です。


現時点で、「ステイブル」の見通しには、来年以降の財政赤字や債務のレベルの減少を織り込んでおり、今年の赤字の拡大は、フィッチとしての信用格付けや見通しの見方を大きく変えることはない、とチャンドラ氏は話しています。


(出所:PhilstarMinistry of Budget and Management


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(トップ画像:Photo by STIL on Unsplash )