海外不動産にかかる売却時の税金は? 3つのポイントを専門家がくわしく解説!

2024/11/12

監修:海外不動産税務の専門家 大木宣幸
(公認会計士・税理士・宅地建物取引士)
International CPA Firms・大木国際会計事務所 代表



海外の不動産を売却すると税金ってどうなるんだろう?」
「海外不動産は売却時の税金がややこしそう!簡単に知りたい!」


海外不動産をすでにお持ちの方も、購入を検討されている方も、売却時の税金はしっかり理解しておきたい項目のひとつですよね。

とはいえ、税金の話はややこしくて抵抗を感じる、という声も多いものです。

今回の記事では、海外不動産を売却した時の税金について、専門家がわかりやすく丁寧に解説していきます。

最後まで読むことで、現地側と日本側でそれぞれ課される税金と、税金の二重払いを調整できるしくみの概要をつかめます。

海外不動産をいずれ売却する時に備えて、税金の全容をおさえておきましょう。





海外不動産を売却するときの税金ポイント3つ

海外で不動産を売却する際に考慮すべきポイントは3つあります。

1.現地でかかる税金
2.日本でかかる税金
3.外国税額控除

では、ひとつずつ見ていきましょう。





1.現地でかかる税金

海外で不動産を売却した際には、現地の法律に基づき、売却により得られた利益(キャピタルゲイン)に対して課税されます。

不動産売買の契約書の金額に応じて、印紙税や付加価値税(VAT、日本の消費税に相当するもの)が課税されることもあります。

ただし、印紙税やVATについては、買い手が負担することが多いので、売買契約の条件を確認しましょう。


キャピタルゲイン税とは

不動産等の資産を譲渡した際に得られる利益(譲渡益/キャピタルゲイン)に対する課税です。

税率は国によって異なります。

また、キャピタルゲインの計算のベースとなる「譲渡益」の考え方も国によって異なります。

売却価格ではなく、現地当局が指定する公示価格や実勢価格を使用する場合もあります。

また、不動産売却による利益(売却価格-取得価格)ではなく、売却価格総額に対して課税される国もあります。



たとえば、フィリピンの例を見てみましょう。

フィリピン国税局によると、キャピタルゲイン税は、以下のように定義されています。




キャピタルゲイン税は、フィリピン国内に所在する資産の売却、交換、その他の処分により売主が実現したと推定される利益に対して課される税金であり、パクト・デ・レトロ売却(買戻し権付き売却)やその他の条件付売却を含む。

(出所:フィリピン国税局


フィリピンのキャピタルゲイン税の税率は一律6%です。

税金の計算のベースとなるのは、特定の条件の場合を除いて、次のいずれか最も高い価格(総額)です。

1) 内国歳入庁長官が定める公正市場価格(ゾーン価格)
2) 州および市査定官の価格表に示された公正市場価格
3) 不動産の売却価格、または交換取引で受け取った不動産の公正市場価格

キャピタルゲイン税の申告・納税は、売却から30日以内となっています。

申告時には、申告書に加えて、売買証書や権利証書の写しも必要です。

手続きを期間内に完全かつ正確に行うためには、現地に詳しい専門家のサポートを受けるのも良いでしょう。




2.日本でかかる税金:所得税

海外で不動産を売却し、譲渡益(キャピタルゲイン)が出た場合には、日本でも国内不動産を売却した時と同様に所得税が課されます。

これは、日本が居住者(*1)に対して「全世界所得課税方式」を採用しているからです。

全世界所得課税方式では、原則として「国内で生じた所得」と「国外で生じた所得」のいずれにも課税されます。


不動産を売却した際に課税の対象となる譲渡所得は、以下の算式で計算します。

譲渡所得 = 土地や建物を売った金額ー(①取得費+②譲渡費用)(*2)(*3)

イメージ図にしてみましょう。


<譲渡所得のイメージ>(出所:PropertyAccess作成)


取得費=不動産の取得・改良・設備の設置などに要した費用です。
【例】売った土地や建物を買い入れたときの購入代金、建築代金、購入手数料などのほか、購入後に支出した設備費や改良費など

譲渡費用=土地や建物を売るために直接かかった費用です。
【例】仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用など


譲渡所得の申告・納税は、毎年2月16日から3月15日までの確定申告のタイミングで行うことができます。


(*1)日本国内に住所を有しているか、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する人
(*2) マイホームを売却した場合などには「特別控除」が受けられる場合がありますが、ここでは割愛します。
(*3) 実際は、建物部分は、取得から売却までの減価償却を差引します。




さらに、譲渡所得は、資産の所有期間によって次の2つに区分されます。

適用される税率が異なるので注意が必要です。



平成25年から令和19年までは、さらに「復興特別所得税」として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付します。


実際に数字を置いてイメージしてみましょう。

たとえば、保有期間5年未満の不動産の譲渡所得が1,000万円だったとします。

譲渡所得の部分についての計算は以下の通りとなります。


国税庁のウェブサイトに詳しい情報が載っていますので、こちらも参考にしてみてください。



3.外国税額控除

海外で不動産を売却した時の譲渡益に対して、現地でも日本でも課される二重の所得税を調整するのが「外国税額控除」という仕組みです。

国際的な二重課税を調整するために、一定額を日本の所得税額から差し引く(控除する)ことができます。

この控除の限度額は、所得税額のうち、その年の所得全体に占める国外で発生した所得の割合に相当する金額とイメージすると良いでしょう。

現地にて支払った日本の所得税に相当する税金があれば、控除限度額内で控除できます。

そのために、外国税額控除の適用を受けられる種類の税金か確認しておく必要があります。




(*4) 過年度の損失の繰越などがあれば、繰越の控除を適用する前の金額




外国税額控除の適用を受けることで、現地で支払った所得税に相当する税金については、一定額を日本の所得税額から控除できます。



まとめ

今回は、海外不動産を売却した時の税金について、以下の3つをご紹介しました。

1.現地でかかる税金
2.日本でかかる税金
3.外国税額控除


海外で不動産を売却した際に発生する譲渡益に対して、現地ではキャピタルゲイン税が課されます。

一方、日本では、海外で得た譲渡益も含めた全世界の所得に対して所得税が課されます。

譲渡所得の課税は、不動産を所有する期間が5年超(長期)か5年以下(短期)かによって、適用される税率が異なります。

現地でも日本でも譲渡所得に課税されますが、現地で課された税金については、外国税額控除の利用を検討しましょう。

外国税額控除を利用することで、日本の所得税額から海外で支払った所得税に相当するのうち一定の税額が控除可能です。

海外不動産を売却する際にも、税金がどこでどのように課されるのか全体像をつかんでおくことで、安心して売買取引に臨むことができます。

とはいえ、細かい実務が発生しますので、不安な方は専門家に相談すると良いでしょう。





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最後までお読みいただき、ありがとうございました。