2024/11/15
監修:海外不動産税務の専門家 大木宣幸
(公認会計士・税理士・宅地建物取引士)
International CPA Firms・大木国際会計事務所 代表
「海外に保有する不動産の売却したら、確定申告ってどうやるんだろう?」
「海外不動産を売却したら、通常とは異なる書類を出すのかな?」
海外不動産の売却を検討するにあたって、日本側の確定申告の方法は気になるところですよね。
今回の記事では、海外に保有する不動産を売却した時の、確定申告の要否から提出書類や時期までを専門家が解説します。
最後まで読んで、海外の不動産を売却したときの確定申告のプロセスをおさえておきましょう。
確定申告の時期を逃したり、必要な書類が見つからずに焦ったりしなくて済みます。
年始に入ると、税務署は一気に確定申告モードで忙しくなります。
確定申告の時期が近づく前に、この記事で全体の流れを把握して、個別の事例について気になるところを税務署に相談しておくと安心ですよ。
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海外不動産を売却した時の確定申告
海外不動産を売却したときの確定申告では、次の3つのポイントをおさえる必要があります。
1.確定申告の必要性
2.提出する書類
3.確定申告の時期
では、ひとつずつ見ていきましょう。
1.確定申告の必要性
日本の居住者が海外の不動産を売却したことにより譲渡益(キャピタルゲイン)を得た場合、日本で確定申告を行う必要があります。
これは、日本が居住者(*1)に対して「全世界所得課税方式」を採用しているからです。
全世界所得課税方式では、原則として「国内で生じた所得」と「国外で生じた所得」のいずれにも課税されます。
したがって、海外で不動産を売却したことによる譲渡益にも、日本で国内不動産を売却した時と同様に所得税が課されるのです。
課税所得の確定申告を行い、所得税を納めなくてはなりません。
不動産を売却した際に課税の対象となる譲渡所得は、以下の算式で計算します。
譲渡所得 = 土地や建物を売った金額ー(①取得費+②譲渡費用)(*2)(*3)
(*1)日本国内に住所を有しているか、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する人
(*2) マイホームを売却した場合などには「特別控除」が受けられる場合がありますが、ここでは割愛します。
(*3) 実際は、建物部分は、取得から売却までの減価償却を差引します。
譲渡所得を計算する際の取得費や譲渡費用の具体例については、以下の記事で詳しく説明しています。
海外不動産にかかる売却時の税金は? 3つのポイントを専門家がくわしく解説!
2.提出する書類
譲渡所得の確定申告をする際には、以下の書類を提出する必要があります。
さらに、外国税額控除の適用を受ける場合は、次の書類も必要です。
外国税額控除を受けるには、不動産を売却した現地側で確定申告し、納税している事が前提となります。
上記①と②は、確定申告をする人なら誰もが提出する書類ですので、ここでは③と④の書類について説明します。
③と④は、譲渡所得を申告する人が提出する書類です。
土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業や給与から得られた所得とは分離して計算します(「分離課税」)。
具体的な記入方法は、以下のとおりです。
ステップ1
まずは、④「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」に売却した不動産の詳細を記載します。 売却代金を外国通貨で受け取り、取得費や譲渡費用も外国通貨で支払っている場合は、円に換算する必要があります。 円に換算するときは、原則、取引を計上する日の対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)とすることとされています。 例えば、2024年11月12日に取引を完了して売却代金をドルで受領したのであれば、日本円に換算するときのレートは以下のとおりです。 |
(TTS+TTB)/2=(154.83+152.83) /2=153.83
▼為替レート例(出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 外国為替相場)
取得費のうち、建物部分については、取得から売却までの減価償却費を差引します。
減価償却の詳細については、別の記事で詳しく解説していきます。
ステップ2
次に、④で記入した内容の合計を③「第三表」に書いていきます。 同一年内に、複数の不動産を売却した場合は、1件ごとに④を記入→③に譲渡所得の合計を書くイメージです。 ③が記入できたら、①と②にそれぞれ転記して確定申告書を完成させます。 提出時には、売買契約書、取得時の資料、経費の領収書等、根拠資料のコピー添付が必要になります。 |
記入する内容と提出する書類の数に気が遠くなりそうですよね。
自力で何とか頑張りたい方は、国税庁ホームページを利用することで、案内に沿って確定申告書等を作成できます。
不安な方は、専門家の助けを借りるのも良いでしょう。
3.確定申告の時期
海外不動産を売却して譲渡益が得られた場合の確定申告は、通常の確定申告の期間に行います。
通常の確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日です。
譲渡所得の申告タイミングは、不動産を売却した日が属する年の翌年の確定申告期間です。
不動産を売却した日は、原則として、売買契約などに基づいて不動産を買主に引き渡した日をいいます。
売買契約の契約締結日に譲渡があったものとして確定申告することも可能です。
▼確定申告タイミングのイメージ(出所:国税庁を元にPropertyAccess作成)
12月末に近いタイミングで売却・引き渡しを考えている方は、確定申告期限までの期間が短いので注意が必要です。
申告に必要な書類をあらかじめ確認しておいて、余裕を持って申告書が作成できるようにしましょう。
まとめ
今回は、海外不動産を売却した時の確定申告について、以下の3つのポイントをご説明しました。
1.確定申告の必要性
2.提出する書類
3.確定申告の時期
海外不動産を売却して譲渡益を得た場合、日本では全世界の所得に対して所得税が課されますので、確定申告が必要です。
確定申告では、譲渡所得は分離課税の対象となります。
通常提出する「第一表」、「第二表」の他に、「第三表」と「譲渡所得の内訳書」の提出が必要です。
提出時には、売買契約書、取得時の資料、経費の領収書等、根拠資料のコピー添付が必要になります。
外国税額控除を利用する場合には、「外国税額控除に関する明細書」も必要です。
海外不動産を売却したときの確定申告は、売却した日が属する年の翌年の確定申告の時期(2月16日から3月15日)です。
海外不動産を売却したときの確定申告のプロセスを理解しておくことで、売却の段階から必要な書類を集めておくことができます。
とはいえ、提出する書類も多いので、ご自身ですべて完結できるか不安な方は、専門家の助けを借りると安心です。
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