2020/11/20
[フィリピン] 中央銀行のサプライズ:再び利下げ
2020年11月19日、フィリピン中央銀行は、ほとんど誰もが想定していなかったさらなる利下げに踏み切りました。今年に入って5度目になります。
フィリピン中央銀行(BSP)のベンジャミン・ディオクノ総裁は、現状の低いインフレ率が金融システムにさらなる流動性を注入する余裕を生んだと説明しており、これにより個人消費の拡大を期待しています。
「平均インフレ率は、2020年から2022年までの目標レンジの下半分いないに収まっており、低迷した国内の経済活動、低い世界原油価格、最近のペソ高を反映しています。」とディオクノ総裁は11月19日のオンライン会見ので述べています。
「パンデミックに伴い国内外の経済活動に混乱が予想されることから、インフレ見通しへのリスクはダウンサイドに傾くでしょう。」
金融政策決定会合は、銀行が貸付金利のベースとする、BSPの翌日物借入金利(Overnight Reverse Repurchase Rate)を25ベーシスポイント下げて2.00%としました。本日11月20日発効となります。
翌日物預金金利は1.5%に、翌日物貸出金利は2.5%になりました。
▼2020年政策金利の推移(出所:BSPを元にプロパティアクセス作成)
ディオクノ総裁は、世界各地でコロナウィルスが再増していることから不確定性は依然として高い状態で、金融政策決定会合は過去数週間で世界の景気見通しにやや陰りが出てきたことを考慮したと話しています。
同時に、金融政策決定会合は、フィリピンのGDP収縮のペースはやわらいだものの、企業、家庭の心理は冷え込んでいること、最近の台風による被害の影響が、今後数か月の景気回復に向かい風を起こす可能性があるとも説明しています。
「これらを考慮した結果、金融政策決定会合は経済活動にテコ入れし、市場の信頼感を高めるために、政策による支援を続ける必要性があると判断しました」とディオクノ総裁は述べています。
「インフレ環境が良性で今後も安定的に推移することが予想されることから、金融政策会合は、このタイミングで利下げをする余地があると判断しました。これにより、成長のダウンサイドリスクが高まる中、市場心理の回復と国の景気回復を促していきたいと考えています。」
ING銀行マニラのシニア・エコノミスト、ニコラス・マパ氏は、今回の中央銀行の動きについて、落ち込む銀行の貸付をよみがえらせ、景気後退に対抗するためのちょっとした賭けだと表現しています。
マパ氏は、実質金利がマイナスの-0.5%となる中、BSPが新たに利下げを行ったことは、第4四半期のGDPが、第3四半期のGDP11.5%収縮から悪くなる見通しだったからだろうと述べています。
マパ氏は、さらなる利下げが行われても、銀行の貸付残高がすぐに回復することには自信がないと述べています。というのも、失業の増加に加えて、消費者心理がネガティブな状態が続いていることから、成長見通しがあまり明るくないからです。
マパ氏はまたは、景気刺激策の欠如もまた、急激な成長の回復を遅らせる代わりに、今後短期での銀行の貸付や投資意欲を冷ますことになりそうだと付け加えています。
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(出所:Business Inquirer)
(トップ画像:Photo by Diane Sy on Unsplash )
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