2021/11/01
先日、タイの中央銀行が、新型コロナウイルスの打撃を受けた不動産業界を支援すべく、LTV(ローン・トゥ・バリュー)、つまり不動産価格に対する借入金の割合を定めたルールを緩和することを発表しました。
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[タイ] 中央銀行、不動産業界支援のため住宅ローンのルールを緩和
2019年以降、タイでは、住宅ローンのLTVは、1,000万バーツ未満の1軒目の住宅については100%、1,000万バーツ以上の1軒目の住宅については90%と定めてられていました。
さらに、価格にかかわらず、2軒目の住宅のLTVは80~90%、3軒目には70%となっていました。
今回の緩和では、すべてのタイプの住宅ローンについて、銀行は、住宅価額の100%までの借入を承認できるようになります。この緩和措置が適用される期間は、2021年10月20日~2022年12月31日までとなっています。
さらに、タイ銀行は、1,000万バーツ未満の1軒目の住宅のための室内装飾のためのダブルローン(二重借り入れ)や追加ローンでは、LTVを最大110%まで認めるとしています。
では、タイ以外のLTVはどうなっているのでしょうか。東南アジア各国の状況を見ていきましょう。
■フィリピン
フィリピン・ナショナル・バンクによると、以下のようになっています。ただし、外国人が借りられるのは、不動産価額の70%までのようです。
融資の対象となる不動産 | 融資額 |
土地+新築住宅 | 販売額または評価額の80% |
土地のみ | 販売額または評価額の60% |
土地+既存(中古)の住宅の改良、 | 評価額の80% |
取得・建築コストの返済 | 販売額の80% |
借り換え | 評価額の80% |
また、BDOは、一軒家/タウンハウス/工事費用については80%、コンドミニアムユニットおよび空地については70%と定めています。
フィリピンの社会保障制度の一つ、Pag-IBIG fundで、住宅ローンの恩恵を受けることもできます。従業員と雇用主の負担割合は1対1で、毎月一定額を拠出します。従業員の負担分は、給与から天引きされます。
この制度を利用した場合の住宅ローンのLTVは、
となっています。
■マレーシア
マレーシア中央銀行は、2010年、住宅市場における投機的な活動を抑え、借りすぎを防ぐ目的で、最大LTVを70%に定めました。これは、すでに3本以上の住宅ローンを持っている人に適用されます。よって、この規則は、1軒目の住宅購入者には適用されません。1軒目の住宅を購入する人は、一般的にはLTV最大95%まで借りることができるようです。
また、マレーシア人に限定されますが、マレーシア人の持ち家促進を目指した「My First Home Scheme(マイ・ファースト・ホーム・スキーム)」を利用すると、条件を満たせば自身で占有するためのマイホームについて、LTV110%が認められるようです。
■シンガポール
シンガポール金融管理局(MAS)が、住宅ローンの借入について定めています。個人向けのLTVの上限は、借入をする人が何本の住宅ローンを組んでいるかによって変わってきます。
2018年7月6日以降に買取権が付与されたレジデンシャル物件にかかるローンの場合、次のLTVが適用されます。
借入済みの融資の本数 | LTV上限 | 現金による最低頭金 |
なし | 75% または 55% | 5% (LTV 75%のとき) 10% (LTV 55%のとき) |
1 | 45% または 25% | 25% |
2以上 | 35% または 15% | 25% |
※ローンの期間が30年(HDBの場合は25年)を超える場合、または借り手が65歳を超えてローンの期間が設定されている場合、低いほうのLTVが適用されます。
■ベトナム
世界銀行によると、ベトナムの住宅ローンは、変動金利で、LTV70~80%で組むことができるようです。ローンの期間は15年から20年ということです。一般的に、正式に雇用されて職に就いている人で、所得を書面で証明できる人のみが住宅ローンを利用することができるようです。
また格付け会社Fitchは、格付けの対象となっている銀行のLTVは80%が上限であると述べています。
いくつか具体的な銀行のルールを見ていきましょう。
銀行名 | LTV |
HSBC銀行 | 70% |
VietinBank | 70% |
Standard Chartered Bank Vietnam | 75% |
Vietnam International Commercial Joint Stock Bank(VIB) | 90% |
(出所:Bangkok Post、Philippines National Bank、BDO、Pag-ibig、LoanStreet、MAS、World Bank、Fitch)
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