[インドネシア] 外国人向けの長期滞在ビザで不動産、経済の活性化狙う

2022/12/26


東南アジア最大の経済圏インドネシアは、中国本土、香港などからの外国資本と不動産投資家を誘致するための長期滞在ビザプログラムの詳細を明らかにしようとしています。



オンラインニュース「バンコクポスト」がジャカルタの関係者の話として報じているところによると、マレーシアやタイといった近隣諸国が行っているプログラムのインセンティブに対抗すべく、銀行預金13万USドル(約1,730万円*)の最低要件と、国外所得に対する税制優遇措置を示しているということです。



このプログラムにより、国内の不動産価格が押し上げられるだけでなく、バリのような人気の島の観光も再活性化されることが期待されています。インドネシア銀行が8月に行った調査では、市場のコンセンサス通り、1.2兆ドル(約1,595兆円)に匹敵するインドネシア経済が2022年1月から6月期で前年同期比5.7%成長した一方で、レジデンシャルのプライマリー市場は回復の勢いを失っていました。



不動産ポータル「Juwai IQI」の共同創始者兼グループCEOのカシーフ・アンサリ氏は、このビザプログラムが、魅力的なライフスタイルと安い生活費を求める中国本土や香港からの投資家に人気になるだろうと述べており、マレーシアのビザプログラムよりも成功するかもしれないと付け加えています。


マレーシアのプログラムでは、銀行の資産として最低150万リンギット(約4,510万円)、月々の海外所得40,000リンギット(約120万円)が要求されています。Juwai IQIのデータによると、マレーシアの「セカンドホーム」プログラムはこれまでに42,000人の外国人を誘致し、そのうち3分の1が中国本土と香港だったということです。



タイも9月から長期滞在プログラムの申請受付を開始しました。こちらは、10年の長期滞在ビザで、富裕層や才能のある優れた外国人を今後5年間で誘致することで、270億ドル(約3.6兆円)の資本注入を行おうとするものです。



マグナム・エステート(Magnum Estate)やサマヒタ・グループ(Samahita Group)といった不動産デベロッパーも、自社のプロジェクトへバイヤーを呼び込むべく、このビザプログラムに強い関心を寄せています。前述のアンサリ氏は、インドネシアの主な観光地であるバリが、不動産投資でも人気になるだろうと予想しています。



マグナム・エステートは、サヌールにビーチフロントのアパートメント165戸を販売しており、価格は375,000USドル(約4,990万円)からとなっています。アパートメントは52年リースで、典型的なバリの住宅の25年よりも長い、30年の更新オプションがついてくるということです。



ビザの条件である13万USドルで、サマヒタ・グループがバリのチャングで開発するレジデンシャルプロジェクト「ザ・ウマラス(The Umalas)」の1ベッドルームのアパートメントの購入することもできます。



インドネシア政府は、パンデミック前には日当たり2万人という観光客を迎えていたバリの観光業を再活性化したい狙いです。通常観光ビザでは最大60日間しか滞在できないところを、このビザプログラムがあると、外国人は5年から10年の滞在が許可されるということです。



リ以外でも、投資家は、インドネシアの回復しつつある経済が、消費と不動産市場における購入に対する自信感を押し上げると期待を寄せています。三菱商事とシンガポールのテマセクが所有するスルバナ・ジュロンの合弁事業であるミトバナ(Mitbana)のCEO、ヤップ・シー・チア氏は、インドネシアは同社にとってカギとなる投資市場で、増加するミドルクラスが、今後もインドネシア経済にコミットするに十分な理由となっていると語っています。



一方で、このビザプログラムについて、インドネシア政府はさらなる明確化を図るべきだと話すのは、ロンドンを拠点とする移住コンサルタント会社のヘンリー&パートナーズ(Henley & Partners)です。特に、5年ビザ、10年ビザの違い、適用される都市などについて詳細の情報を提示すべきだとしています。



同社は、バンコクポストの取材に対して、「見たところでは、シンガポール、マレーシア、タイといった他の東南アジア諸国が提供している投資移住プログラムと比較すると、(インドネシアの)ビザは魅力的な提案に見える」と回答しています。



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*日本円表示は、記事執筆時のUSドル/日本円の為替レートで換算した参考値です。


(出所:Bangkok Post

(画像:Image by thibaultjugain from Pixabay)