2021/11/18
マレーシアの2021年第3四半期の国内総生産(GDP)は、再び収縮に転じました。長引くロックダウンとCovid-19感染者数の急増により、東南アジアの中でも初めて再びスランプを経験した国となりました。
▼マレーシアのCovid-19陽性者数推移(出所:WHO)
マレーシア中央銀行の発表によると、2021年7月~9月の3か月間の国民総生産(GDP)は、前年同期から4.5%収縮しました。前期(4月~6月)と比較すると、季節調整を加えたベースでは3.6%減でした。
経済のすべてのセグメントで減速が見られました。マレーシア中央銀行のノル・シャムシア総裁は、ブリーフィングの中で、支援を続け、価格の圧力をコントロールできる範囲内に抑えるべく、協調的な金融政策を続けていくと述べました。
第3四半期のスランプにもかかわらず、中央銀行は、政府の今年の経済成長率見通しとして3~4%、実質インフレ率2~3%を据え置く方針です。2022年の公式なGDP成長率見通しも、5.5%~6.5%であることを強調しています。
「行動制限の段階的な緩和と労働市場の改善が、今後の回復を助けていく重要なカギになる」とシャムシア総裁は、第4四半期の改善に対する期待を見せました。
今回の見通し発表は、マレーシアがシンガポールと11月29日からワクチン接種済みトラベルレーン(Vaccinated Travel Lane)を発表した数日後のことでした。来年初には、インドネシアとのトラベルバブルを開始することも発表されています。
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マレーシアでは急速にワクチン接種が進み、ここ数か月で国内経済が再開できるようになってきました。クランタン州およびサラワク州以外は、段階的に経済を再開させる政府の国家回復計画において最終段階に入っています。
また、11月15日より、パイロットプロジェクトとして、ランカウイを海外からの観光客にも解放しています。政府は、同プロジェクトの評価を行ってから、国内の他の観光地にも展開していく方針だと、イスマイル・サブリ・ヤーコブ首相は先月述べています。
政府は、かなり遅れてしまった経済の立ち直りに拍車をかけるべく、来年の3,321億リンギット(約9兆円)の予算案を発表しました。このうち、Covidの景気刺激策だけで230億リンギットが割り当てられています。
中央銀行は、11月に入って、再びベンチマーク政策金利を過去最低の1.75%に据え置く決定をしました。Covid-19感染抑制のための規制が緩和され、インフレが制御できる範囲内にあることから、始まったばかりの景気回復を支えたい考えです。実質インフレ率は、来年も穏やかな状態が続きそうだと、シャムシア総裁はコメントしており、金融支援の撤回が時期尚早とならないように、注意して見ていく方針だとしています。
政府の成長見通しには、リスクも残ります。マラッカ州、サラワク州で行われる予定の州選挙により、今年6月以来の減少を見せている、Covid-19感染者数を増加させるかもしれません。
R-naught(基本再生産数)として知られるウイルスの増倍因子は、主要な閾値である1に戻り、政府は病院の入院者数その他の指標を注意深くモニタリングしています。保健省は、11月20日のマラッカ州の選挙を前に、ウイルス関連の手続きに違反した選挙活動中の政治家に罰金を課したりしています。
昨年サバ州で行われた選挙後に感染者数が急増したことで、ムヒディン・ヤシン元首相は国民の怒りを買い、今年8月、ムヒディン内閣は予想よりも早く交替に追い込まれたと言われています。
▼マレーシアGDP成長率(出所:Ministry of Finance)
(出所:Business Times)
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