[マレーシア] 外国人の不動産最低購入価格引き下げ

2019/12/24


[マレーシア] 外国人の不動産最低購入価格引き下げ


不動産購入価格引き下げの詳細

2020年、外国人が購入できるマレーシアの高層レジデンシャル物件は60万リンギット(約1,585万円)~となります。2020年予算の一環として、マレーシアのリム・グアン・エン財務相は、マレーシアの不動産供給過剰を解消するための対策として、外国人の不動産所有の最低価格100万リンギット(約2,642万円)を引き下げることを発表しました。

現在のところ、政府は、この外国人不動産最低購入価格の引き下げは、すでに完成済みで売れ残っているコンドミニアム・アパートメントに限るとしており、土地付きの物件には適用されません。さらに、この引き下げは、2020年1月1日施行で、2020年1年限り有効となっています。


購入価格引き下げの背景

マレーシアでは、建物完成済みで行政からの建築物使用許可が降りているにも関わらず、少なくとも9ヶ月間売れていない物件(=オーバーハング状態の物件)が大量に存在します。これらの売れ残り高層ユニットは、2019年後半期で83億リンギット(約2,193億円)に上ります。

なお、マレーシアでは、クアラルンプール・ペナン・セランゴールの順に不動産が供給過剰状態です。特に、クアラルンプールでは供給過剰の度合いが強くなっています。


今後期待される効果

不動産の最低購入価格引き下げが成功すれば、政府には、景気を刺激する資本が入ってきます。また、不動産市場が経済全体と深くかかわっていることを考えると、不動産取引に関わりのある弁護士や不動産エージェント、評価人や銀行以外にも、プラスの波及効果が及ぶでしょう。

そのほか、近隣諸国からの不動産需要も急騰すると予測されています。シンガポール、中国、そして特に香港では、リンギット安や各国の政情不安を背景として、投資家たちが資本をマレーシアに移動させているからです。


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しかし、外国資本の投入を喜ぶ人たちばかりではなく、最低購入価格の引き下げに懸念を示す人もいます。財務相の発表は、デベロッパーへの救済措置とも解釈されているからです。

これにより、住宅のアフォーダビリティー、つまり購入しやすさに関する議論に火が付きました。この緩和策を受けて、デベロッパーの中には外国人レジデンシャル市場用の物件を建設する者も出てくるのではないかと懸念する政党もあります。


マレーシアで外国人が購入できる物件のタイプ



マレーシアでは、外国人がコンドミニアム・土地・土地付きの戸建てを購入できます。マレーシアでは、以前まで外国人が土地を所有することはできませんでした。しかし、2006年に法律が改正され、2020年現在では、外国人も土地を所有できるようになっています。

ただし、州政府から指定された中〜低価格帯の住宅や、先住民向けに割り当てられた物件などは、外国人が購入できません。マレーシアは多民族国家であることから、主にマレー人を保護する規制があるためです。なお、東南アジアでは、大半の国が外国人による土地の所有を認めていません。マレーシアは、外国人も土地を所有できる、東南アジアの中でもめずらしい国です。


外国人が物件を購入するには州政府の許認可が必要

外国人がマレーシアで不動産を購入するには、州政府の許認可が必要です。申請は、マレーシアの弁護士を通じて不動産が立地している州の政府に行います。なお、許認可の取得までには数ヶ月かかることもあるので要注意です。


MM2Hビザの保有による規制緩和

MM2Hビザ(=特例の長期滞在ビザ)保有者に対しては、一部の州で最低購入価格に関する規制が緩和されます。例えば、ペナンでは最大2物件まで50万リンギットで購入できるほか、ジョホールでも物件ごとに規制緩和を受けることが可能です。

※MM2Hビザは2020年8月から一時的に発給停止されています。


マレーシアの内需向け住宅購入支援策

マレーシア政府は、マレーシア国民がマイホームを購入するための支援策をいろいろと打ち出しています。完成済み住宅在庫の処分が進み、住宅の内需が喚起されることによって、住宅市場の適正化と将来的な物件価格の値上がりも期待できるでしょう。


(1) 若者向け住宅購入スキーム(Youth Housing Scheme)

若者のマイホーム購入を支援するため、政府はマレーシアの国営貯蓄銀行であるバンク・シンパナン・. ナショナル(BSN)が運営する若者向け住宅スキーム(Youth Housing Scheme)を、2020年1月1日から2021年12月31日まで延長すると発表しました。

スキームはマレーシア国立抵当公社チャガマス(Cagamas)を通じた10%の融資保証も提供しています。これにより、10,000戸、最初に2年間に限定して、借り手に融資100%での購入を可能にし、200リンギット(約5,300円)の月々の分割払い援助が受けられます。


(2) 低所得層のマイホーム購入支援策

2019年1月に立ち上げられた「アフォーダブル住宅基金(Fund for Affordable Home)」により、低所得層のマイホーム購入への援助もされています。15万リンギット(約396万円)までの物件について、最大3.5%の優遇金利が適用されています。

2019年9月1日に、適用対象を広げ、30万リンギット(約792万円)の物件までとし、最大世帯収入も、2,300リンギット(約6万円)から4,360リンギット(約11.5万円)へと引き上げられました。


(3) 住宅所有キャンペーン(Home Ownership Campaign)

また政府は、住宅所有キャンペーン(Home Ownership Campaign)も立ち上げ、適用対象となる物件にはデベロッパーが少なくとも10%の割引を提供しており、一部の物件では印紙税も免税となります。

当初の販売目標30億リンギット(約793億)をはるかに超える、134.4億リンギット(約3,549億円)相当、21,000ユニットが住宅所有キャンペーンで販売されました。キャンペーンの締切は、6月30日から6か月延長され、2019年12月31日までとなっています。


(4) 購入オプション付き賃貸(RTO)

最初の10%のデポジットやマイホーム購入のための資金調達ができない者には、RTO(Rent To Own)というスキームも用意されています。RTOスキームは、物件価格50万リンギット(約1,320万円)までの最初のマイホーム購入者向けです。

このスキームでは、申請者は5年間まで物件を賃貸することができ、1年経過したら、テナントは賃貸契約を締結した時点の固定価格に基づいて、同物件を購入するオプションが与えられます。また、30%(30億リンギット(約792億円))の政府保証の差し入れにより、金融機関から100億リンギット(約2,640億円)の資金調達が可能になります。

政府は、デベロッパーおよび金融機関の間、また金融機関とスキームを利用する購入者の間の移転にかかる文書の印紙税も免除することにしています。

(出所:Asean Economist、The Star Online)