2020/12/02
[マレーシア] UOB銀行:マレーシア経済2021年は6.0%成長
ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(マレーシア)のシニアエコノミスト、ジュリア・ゴー氏は、マレーシア経済について、今年の5.5収縮から一転して来年は6.0%のリバウンドを遂げると予想しています。
物価はやや高めに取引される可能性があり、ゴー氏は、特に原油については、世界経済の回復に伴って上昇し、2021年は1バレル=50ドルから60ドルの間で取引されると予想しています。
これが対ドルのリンギット高に働く見通しで、来年末までに1ドル=4.0リンギットとなると予想されています。
ゴー氏は、2021年の経済成長は、パンデミックの不確定性(Covid-19の第3波)が後を引くことと、またワクチンの実効性によって、均一ではないだろうと考えています。
外需の状況改善、財政支援策・景気刺激策、金利据え置きの見込み、そしてワクチン投入への前向きな心理に後押しされて、景気回復基調が続くだろうとしつつも、Covid-19ワクチンの承認状況やその効果によっては、来年の成長が妨げられることもありそうだと述べています。
「まだまだ課題はあると考えているので、より保守的な見方をしています。より多くの人のワクチン接種が進まないと、強い上向きの動きは見られないでしょう。」
ゴー氏はまた、政府の開発費やインフラプロジェクトが、来年の成長見通しを左右すると考えています。
今後の成長を促進するもう一つの要因は、大規模インフラプロジェクトの進捗です。これらのプロジェクトには、MRT(高速鉄道輸送)3号線、イーストコースト鉄道接続線(RCRL)、ウェストコースト高速道路、国家デジタルインフラ計画(Jendela)、ジョホールバル-シンガポール鉄道トランジットシステム、クアラルンプール-シンガポール高速鉄道(HSR)などがあります。
「パンデミックのリスクが長引いていますので、少なくとも来年前半期は、現在行われているCovid-19対策の標準作業手順(SOP)実施が続くでしょう。デベロッパーや建設業者の一部は、いまだにSOPの遵守が営業上の課題だと述べています。」とゴー氏は言います。
UOB銀行は、ゴム、電気・電子、および医療セクターへの投資が来年の成長をけん引すると期待しています。
ゴー氏は、トラベルバブルが始まってもSOP、検査、隔離などを伴うことが予想され、渡航の自由を制限することになりそうだとも述べています。
「トラベルバブルは、投資や商取引、ビジネスのための必要不可欠な渡航に限られて、初期段階では観光には利用できないでしょう。」
ゴー氏は、トラベルバブルの確立は、マレーシアとその相手国がいかに早くCovid-19のピークを抑え、集団ワクチン接種を可能にするかにかかっていると言います。
「レジャー活動が再開できるのは2021年後半期から年末にかけてでしょう。これもまた、ワクチンの効果と感染の封じ込めによります。」
ゴー氏は、まず手始めに、トラベルバブルを使って、潜在的な投資家を入国させ、契約の締結や投資の実行を許可していくことが出来そうだと述べています。
11月に行われた地域的な包括的経済連携協定(RCEP)調印もまた、自由かつ公正な競争のため、域内統合に向けた協力へゴーサインを出しています。
ゴー氏はこれについて、域内そしてマレーシアのために、より多くの商取引と投資を域内に呼び込むことになりそうだと述べています。また、アジア太平洋諸国間の統合はもちろん、経済・貿易のつながりをより深めることになるとも加えています。
最近行われたアメリカ大統領選の結果もまた、中国との貿易協議・交渉を新しく始めるのによい前兆だと指摘しています。
「米中間の緊張の改善につながるとみられており、アジアの残りの地域にポジティブな波及効果をもたらすでしょう。」
ゴー氏によると、特に戦略的な高付加価値セクターにおいて、外国直接投資を誘致し国内投資を加速させるために、複数の投資インセンティブや補助金が設定されたということです。
例えば、マレーシアに域内の貿易・オペレーションのハブを設置する外国企業に対する税インセンティブや、ハイテク・イノベーションセクターや国内サプライチェーン改善のための補助金などです。
ゴー氏はまた、現在クアラルンプール首都圏を中心に行われている条件付き活動制限令(CMCO)に基づく制限は、経済活動の継続を認めているため、以前のCMCOより緩い点も指摘しています。
「今回のCMCOが経済にもたらす影響は、約170億リンギットから220億リンギット(約4,383億円~5,637億円)と見られています。一方で、2020年3月、4月に行われた強化された活動制限令(EMCO)期間の経済的影響は300億リンギットから450億リンギット(約7,687億円~1.15兆円)と言われていますので、今回は約半分です。その理由は主に、全国レベルでのロックダウンではないからです。」と付け加えています。
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(出所:New Straits Times)
(トップ画像:Photo by Shubhadeep Das on Unsplash)
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