[フィリピン] 不動産市場動向(2020年4月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年4月のレポートを発表しています。ロックダウン中のフィリピン不動産市場の動向をみていきましょう。

[フィリピン] 不動産市場動向(2020年4月)


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年4月のレポートを発表しています。デベロッパー各社は資本的支出を削減したりして資金に余裕をもたせる一方で、不動産購入のデジタル化に力を入れていきたいようです。コロナの影響で全体的に市場が低迷する中、物流・工業不動産はEコマースの成長にともない重要性が注目されています。


■不動産市場全般

・アヤラランドは、Covid-19流行で時期は確定していませんが、REITの申請を続行する計画です。アヤラランドは、2020年2月に子会社AREITの登録をフィリピン証券取引委員会に申請済みです。

・大手デベロッパーはCovid-19流行対して慎重なアプローチをとっており、支出を削減することで財務状態に余裕を持たせたい考えです。
アヤラランドは、優先順位の高い支出や、危機的なプロジェクトに資金を向け直すために、資本的支出を当初の1,100億ペソ(約2,343億円)から700億ペソ(約1,491億円)に削減しようとしています。また、コロナが落ち着いたあと適度な開発供給が準備されているとして2020年には新しいプロジェクトは立ち上げないと発表していますが、物流・医療分野への投資強化を計画しているようです。

アボイティス・エクイティ・ベンチャーズもまた、当初発表していた730億ペソ(約1,555億円)から、470億ペソ(約1,001億円)へと資本的支出を削減し、パンデミックの中、慎重にオポチュニティを見極めたい考えです。

2社とも、世界的なパンデミックの影響が落ち着くにしたがって、「ニュー・ノーマル(新常態)」へと適応するために、さらなるデジタル化への投資も考えているようです。



■オフィス

・ルソン島全域に強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ)が出された状態で建設工事も禁止されていたため(※注:5月9日、政府は官民セクターの建設工事の再開を認めています)、新規オフィス供給の完成にも遅れが出ており、2020年第1四半期に完成予定であったものの40%ほどしかテナントに引き渡しされていません。IT-BPM(business processing management)やフィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ(POGO)といった需要のけん引役の事業拡大計画が中断してしまっているため、オフィススペースの需要も低迷しています。

・フリーランサー、起業家、スタートアップ企業、小規模企業、IT企業、BPO、多国籍企業といった業種に支えられ、コワーキングはメトロマニラで人気が出てきています。一方で、WeWorkは、フィリピン企業に対して、ソーシャルディスタンシングを保てるようなフロアのレイアウト変更を検討し、バックアップ・フレキシブル・ワークスペースを提供することで、パンデミックの間の従業員の動員支援を行う意思を表明しています。


▶WeWorkのバックアップ・オフィススペースに関するPropertyAccess.coの過去の記事は「こちら



■レジデンシャル

・レジデンシャル価格は2019年第4四半期、2四半期連続で2桁成長を遂げました。レジデンシャル不動産価格インデックス(Residential Real Estate Price Index: PREPI)は、2019年第4四半期に10.2%の成長を遂げました。これは、第3四半期の成長率10.4%よりやや低くなっています。

・デベロッパー各社は、ECQ期間中もアクセスしやすさを保つために、デジタルチャンネルを立ち上げようとしています。アボイティスランド、ロビンソンズ・ランド、ブリア・ホームズなどは、バーチャルツアー、デジタルカタログ、デジタルキャンペーン&プロモーションを通じて、マイホーム購入のコンタクトレス(接触なし)化を進めています。オンライン支払チャンネルを通して予約金の支払もできるようになっています。

・セブ・ラプラプシティに新しいラグジュアリー・レジでシャル&リゾート開発がオープンしました。タイタンズ・プロパーティーズ&デベロップメント(Tytans Properties and Development Inc.)は、11ヘクタールのレジデンシャル・リゾート・コミュニティに、タンブリ・シーサイド・リビング(Tambuli Seaside Living)をオープンさせました。同デベロッパーはこのタンブリ開発のフェーズ2も立上げ予定です。



■ホスピタリティ

・現在実施中のECQ、施設の閉鎖、渡航禁止などによりカジノへの来客が60~80%下落する見込みとなっており、アジア・パシフィック地域のゲーミング業界の採算が悪化しそうです。パンデミックの封じ込めが成功したあとも、消費者心理が冷え込んでいることから、回復は段階的と見られています。

・ホテル業界は大混乱となっており、政府にCovid-19の影響を緩和するための支援を要請しています。政府からのサポートが途切れ、多くの宿泊施設に閉鎖の危機が差し迫っていることに触れ、税額の軽減、労働力の支援、観光刺激策などの形での支援に注目しています。

一方で、一般的なコミュニティ隔離措置(General Community Quarantine (GCQ))に置かれたエリアでのホテル営業は認められています。GCQは、Covid-19のリスクが低い地域に出されており、ECQ下での制限措置を、厳しい衛生・職場のスタンダードを設定したうえで、段階的に緩和することが許されています。



■工業/物流

・複数の事業者から成る団体が政府に対して、港費を下げ物流の効率を上げるように政府に求めています。提案されている措置には、通関の遅延により港に滞留した貨物にかかる料金の支払猶予があります。事業者団体はまた、空コンテナのための十分なヤードスペース、投資振興機関によるアセスメント要件の整流化、関税局での自動化効率なども要求しています。さらに、事業者団体は、ECQ期間のサプライチェーンの中断は、主に港やチェックポイントでの遅延であるとして、ワーキンググループによるCovid-19流行関連の規制による影響を査定するように推奨しています。

・アボイティス・グループは、資本的支出の削減を発表したのちにインフラ・電力プロジェクトへの投資を削減する一方で、工業ビジネスユニットは、Eコマースの成長を受けて物流への需要が高まっていることを認めています。

・アヤラ・コーポレーションは、将来のインフラビジネスのオポチュニティを高め、輸送・物流への投資を増やす方向で、ACエナジー&インフラストラクチャー社の下にエネルギー、水道、輸送、物流ビジネスを集める計画です。



■リテール

・ハングリー・ワークホース・コンサルティング社(Hungry Workhorse Consulting)のCEOによると、Covid-19流行を受けて従来の消費活動ができない中、新しい消費者市場セグメントが生まれていると定義しており、これらを異なる消費者ニーズ対応のためのガイドとして使っていけそうです。

(1) Problem Solvers(問題解決型):積極的に計画し、新しい物にトライし、既存の困難への解決方法を見つけるタイプ
(2) Emotional Expressionists(感情表現型):ソーシャルメディアなどでどんどん感情表現をし、バーチャル上での集まりをしたり、自分が落ち着くアクティビティを探すタイプ
(3) Understanding Seekers(現状理解型):現状を理解し学ぼうとするタイプ
(4) Help and Support Seekers(支援探求型):他人からのサポートを求めるタイプ
(5) Problem Avoiders(問題回避型):現実逃避できるようなアクティビティを探し、何も起こっていないようにふるまうタイプ

・ロビンソンズ・ランド社は、2020年5月1日より、メトロマニラ外のGCQに置かれたエリアでモールの営業を再開します。営業再開が認められたモール内には、ウィルス感染を封じ込めるための衛生・安全措置が実施されます。(※注:実際には5月16日からオープンしているようです)


(出所:Cushman & Wakefield

(トップ画像:nellybois from Pixabay )