[フィリピン]不動産市場動向(2020年5月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年5月のレポートを発表していますのでご紹介していきます。

[フィリピン]不動産市場動向(2020年5月)


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年5月のレポートを発表しています。新型コロナウィルス(Covid-19)の影響で減益となったデベロッパーもある一方で、今後の回復に向けて精力的に動いているデベロッパーもあるようです。工業不動産/物流は、不動産業界全体が低迷する中、唯一活気を見せているようです。


■不動産市場全般

・フィリピンの2020年第1四半期の成長率は-0.2%と、アジア通貨危機真っただ中にあった1998年以来、初めてのマイナスとなりました。不動産デベロッパーの中には、新型コロナウィルス(Covid-19)の影響で経済活動が2か月以上も止まってしまったがために、減益となったものもありました。一方で、銀行業界は十分な資金と流動性を備えて、2021年に向けて不動産市場に起こるかもしれないリスクを乗り切る準備ができていそうです。

・ダブル・ドラゴン・プロパティーズ社(Double Dragon Properties)は、同社が所有する803,000平米のリース資産のうち約4分の1を譲渡して設立するREITの売り出しで、2020年末までに110億ペソ(約235億円)を資金調達するという当初の計画を実行するようです。この決断の背景には、同社が、投資家は適切かつ回復力のあるポートフォリオを投資家が求めていると考えているからです。

同様に、フィリンベスト・グループ(Fillinvest Group)も、25億ペソ(約53億円)をかけて、パンパンガ州クラークのタウンシップ開発に乗り出す計画です。こちらは、201ヘクタールのフィリンベスト・ミモサ・プラス・レジャーシティと、288ヘクタールのフィリンベスト・アット・ニュー・クラーク・シティです。フィリンベストは、2棟のBPOオフィス(総賃貸面積約34,000平米)と、小型のショッピングセンター(総賃貸面積約5,400平米)をミモサに建設しています。また、ホテルと寮(ドミトリー)のコンセプトを合体させたドルミテル事業も開始する計画です。現在、ミモサに4棟のドルミテルの建設を計画しており、各棟には800床ほどが入る予定となっています。ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)従業員を対象とした、フィリンベストの新しいリース用物件である、「ロッジプラス(Lodgeplus)」ブランドの最初の建物は、2020年内に竣工予定となっています。


■オフィス

・今後、職場に戻る従業員が増加傾向にあることを予想して、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、ロックダウンの規制が解除され、職場が再開される際の、不動産テナントおよびオーナーのための包括的ガイドをまとめています。「Recovery Readiness: A How-to Guide for Reopening your Workplace(仮訳:回復の準備:職場再開のためのハウツーガイド)」では、職場に戻る準備をするうえで必要不可欠な「安全6か条」をまとめています。

  1. (1) 建物の準備:清掃プラン、再開前点検、HVAC(暖房、換気、および空調)および機械系統チェック

  2. (2) 労働力の準備:職場に戻る人、シフト/スケジュール管理、従業員間のコミュニケーションにかかる方針づくり

(3) アクセス管理:安全・健康チェック、建物受付、出入荷、エレベーター、来客方針に関して定められた手順の実施

  1. (4) ソーシャル・ディスタンス計画の策定:密を避けるためのガイドライン、スケジュール管理、オフィス内の人の流れに関するガイドラインの遵守

  2. (5) 接触ポイントの削減、清掃活動の増加:ドアの解放、クリーン・デスク方針、共有エリアでの飲食の方針や定期的な清掃の実施

  3. (6) 信頼感を高めるためのコミュニケーション:職場に戻ることに対して従業員が抱える不安の認識、オープンな話し合い、定期的なヒアリング・調査の実施


■レジデンシャル

・不動産各社が、採算性よりもマーケットシェアを取り戻すことに注力することから、2020年を通じて、レジデンシャルコンドミニアムの価格は、特にミッドエンド市場において、下降傾向が見られそうです。需要も低迷することが見込まれるので、デベロッパー各社は、直接割引、販売プロモーション、景品やアドオンなど、様々な形で価格競争に入りそうです。住宅用の土地および一戸建てや低層物件の需要は今後も堅調だとみられています。

・Covid-19感染拡大抑制策としてのコミュニティ隔離措置の期間、家族や親戚とともに過ごす時間が増え、デベロッパー各社は、ソーシャル/身体的な距離を保てるような自分の居場所の重要性に注目しています。不動産を購入する際には、不動産管理、特にレジデンシャル敷地内での安全維持におけるデベロッパーの管理能力を見直す必要がありそうです。

・ゴールデン・ベイ・ランド・ホールディングス(Golden Bay Land Holdings)は、最新の開発物件「ガーデンシティ(Garden City)」の鍬入れ式の計画を発表しました。6棟で構成されるこのプロジェクトは、バコール市に建設予定のLRTバコール駅至近となっています。


■ホスピタリティ

・Covid-19により観光業界が前代未聞の打撃を受け、マルコ・ポーロ・ホテル・ダバオは、2020年6月15日から観光・ホテル業界が復活するまでの間、無期限で休業を決めました。同ホテルは、ダバオ市で唯一の5つ星ホテルでした。休業を決めた背景として、ダバオ市にコミュニティ隔離措置が実施されている間はBPO業界の宿泊客を対象に営業を続けてきましたが、それだけではオペレーションを維持するには十分ではなく、いずれコミュニティ隔離措置が解除されれば宿泊客も去るからだとしています。一方で、ダバオ市内の他の主要ホテルと国内のセダ・ホテルは、政府からの指令に従ってサービスや施設を限定し、厳しい健康・安全手順を実施の上で、営業を続けています。オープンしているホテルは、長期宿泊客、BPO企業、医療現場で働く人たちの需要で支えられています。

・サントラスト・ホーム・デベロッパーズ社(Suntrust Home Developers Inc.)は、ウェストサイド・シティ・リゾーツ・ワールド社(Westside City Resorts World Inc.)と運営保守契約を結び、マニラ・ベイショア・インテグレーテッド・シティ(Manila Bayshore Integrated City)に建設予定のウェストサイドの主要なホテル兼カジノの運営保守を勝ち取りました。この契約期間は、2020年5月4日から2033年7月11日までで、終了されない限りは自動更新されることになっています。


■工業/物流

・2020年第1四半期の不動産業界が全体的に低迷する中、アヤラランド・ロジスティックス・ホールディング社(AyalaLand Logistics Holdings Corp.)は、工業用地の販売・倉庫リース収入を増加させました。工業用地販売収入は、前年同期比112%増の3億5,130万ペソ(約7.5億円)、倉庫リース収入は、前年同期比45%増の1億920万ペソ(約2.3億円)となりました。

・ロビンソンズランド社(Robinsons Land Corp.)は、今年の設備投資計画を見直し、当初の270億ペソ(約576億円)から240億ペソ(約512億円)にします。この11%の設備投資削減は、隔離措置の期間に事業活動が停止したためです。一方で、同社の倉庫業務による収入は、2020年第1四半期、前年同期比で96%増の9,640万ペソ(約2億円)となりました。ロビンソンズランドは、市況が改善したら、倉庫/物流ポートフォリオを拡大していきたい考えです。


■リテール

・SSIグループは、ECQおよびMECQの間、ほとんどの店舗を閉鎖したことにより損失を被りましたが、隔離措置が解除された通常営業に戻れば、回復が見込めると考えています。Zara、Burberry、Calvin Klein、Kate Spade、Shake Shackなどの国際ブランドを取り扱うSSIグループの2019年の純利益は52%の増益でした。SSIグループは、昨年売上を伸ばした8つのEコマースに注力していくとみられています。

・メガワールド社(Megaworld Corp.)は、パンデミックがもたらした変化に適用するためにEコマースへの参入を計画しているようです。メガワールドのEコマースへの参入は、ニューノーマル(新常態)へ移行するにあたって、ライフスタイルモールが買い物客とどのように関わっていくかという重要な要素だと位置付けられています。一方で、メトロマニラのショッピングモールは、2020年5月16日から開始した「修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置(MECQ)」のもとで部分的に営業を再開しています。生活必需品の販売を行う店舗やテイクアウトを行うレストランの他に、ホームセンター、衣料品・アクセサリー店、書店、学用品・オフィス用品店、通信・電気店、その他雑貨店も営業が許可されています。

(出所:Cushman & WakefieldBusiness World Online

▶フィリピンのコミュニティ隔離措置の違いについては「こちら」を参照