2023/12/29
さまざまな逆風にもかかわらず、フィリピン経済は2023年1月から9月期で5.5%の成長を遂げました。この期間の経済成長率としては、アジア最高でした。2023年第3四半期単独ではフィリピンの経済成長率は5.9%でした。
国家経済開発庁(NEDA)のアルセニオ・バリサカン長官は、これによりフィリピンはアジアで最も好調な経済のひとつになったと述べました。一人当たりの国内総生産(GDP)はすでにコロナ前の水準を超えました。また、多くのセクターでコロナ禍の前の実績を上回るレベルに達しているということです。
「鉱業・採石業、建設業、運輸・倉庫業、宿泊・飲食サービス業、不動産業、その他サービス業など、第3四半期末時点でまだ完全には回復していない部門もあるが、これは、特に観光促進や大型プロジェクトの建設増強の努力を続けている現在、これらの部門が経済の継続的な成長ドライバーとして期待できることを意味しています。」とバリサカン長官は述べています。
インフラ旗艦プロジェクト
さらなる成長促進を目指し、フェルディナンド・R・マルコス・ジュニア大統領が議長を務めるNEDA理事会は、197件、8.7兆ペソ(約22兆円)にのぼるインフラ旗艦プロジェクトを承認しました。
これらのプロジェクトは、長年のインフラ不足に対処することを目的としています。「高速道路、橋、空港、鉄道、港湾、通信、その他のインフラなどの重要なプロジェクトを優先的に完成させることで、事業コストを大幅に削減し、特に・中小・零細企業の市場機会を拡大し、質の高い雇用創出と技術革新を促進することができる」とバリサカン長官は述べています。
財務省(DOF)が発表した報告書によると、政府はこれまでに、大口のインフラ旗艦プロジェクトのために、いくつかの補助金や融資パッケージを確保しています。
これらに含まれるプロジェクトには、以下のようなものがあります。
・南北通勤鉄道延長プロジェクト:20億2,000万米ドル(約2,856億円)
・南北通勤鉄道プロジェクト(マロロス-トゥトゥバン間):8億1,090万米ドル(約1,147億円)
・ダバオ公共交通近代化プロジェクト:10億7,000万米ドル(約1,514億円)
・バターン-カヴィテ間連絡橋プロジェクト:6億5,000万米ドル(約919億円)
「フィリピン政府とその開発パートナーによって支えられているこの強力なプロジェクトのパイプラインは、国の継続的な発展と経済拡大の基盤を形成し続けている。」とDOFは述べています。
マハリカ投資基金(Maharlika Investment Fund)
7月に署名された共和国法第11954号(マハリカ投資基金(MIF)法)もまた、長期的な成長を促進することが期待されています。
国家開発投資基金であるマハリカ投資基金の設立は、国の発展に不可欠な分野への戦略的投資を行うための新たな手段を政府に提供するものです。
MIFは、外貨、債券、国内外の社債、合弁事業、M&A、不動産、持続可能な開発の達成に貢献するインパクトの高いインフラ・プロジェクトなど、幅広い資産への投資に活用されることになっています。
2024年の見通しは
2024年、開発予算調整委員会(DBCC)は6.5〜7.5%のGDP拡大を目標としています。政府が成長加速に向けた取り組みを強化する中、フィリピンの経済成長は来年加速すると予測されています。
NEDAは、政策諮問機関として、また立法・行政開発諮問委員会の事務局として、重要な法案を提唱していくことを誓っています。
「これらの改革は、土地、鉱物、公的収入など、限られた貴重な資源の活用を最適化するためのものです。」「特定のセクターにおける体系的な課題に対処する立法措置は、より多くの質の高い雇用を創出し、労働者に様々な機会を提供し、将来的に貧困と脆弱性の持続的な削減につながる、産業や経済の推進力を促進することを意図している」とバリサカン長官は述べています。また、エルニーニョ現象の影響を緩和する対策についても実施するとしています。
リサール商業銀行(Rizal Commercial Banking Corporation)のチーフエコノミストであるマイケル・リカフォート氏は、海外フィリピン人労働者の送金、製造業の成長、インフラを中心とした政府支出のさらなる増加により、2024年のフィリピン経済は6〜6.5%の成長を遂げるとして政府の目標は達成可能だと考えています。
リカフォート氏は、さらなる財政改革やその他の措置が実現すれば、外国人所有権の制限がさらに緩和され、より多くの外国投資の参入を誘致し、より多くの雇用を創出するのに役立つだろうと述べています。また、輸出の回復の可能性、記録的な低失業率、観光部門の再開・回復もフィリピン経済にとって明るいニュースだと述べています。
一方で、それを相殺するリスク要因としては、個人消費を減退させかねないインフレ率の上昇、金利の上昇、イスラエル・ハマス戦争などの地政学的リスクなどを挙げています。
(画像:UnsplashのNikko Balanialが撮影した写真)
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