[フィリピン] S&P、フィリピンの格付・見通しを据え置き

2020/06/01

[フィリピン] S&P、フィリピンの格付・見通しを据え置き


アメリカ合衆国・ニューヨーク市に本拠を置く金融サービス企業スタンダード&プアーズ・グローバル・レーティングスは、今年の経済成長率見通し-0.2%から2021年は9%成長へとバウンスバックするとの見方から、フィリピンの格付を「トリプルBプラス(BBB+)」、見通しを「安定的」に据え置くと発表しました。
 

スタンダード&プアーズは、5月30日(土)に発表した声明の中で、「短期的には、経済の低迷が財政に重くのしかかるものの、堅調な経済ファンダメンタルズとオーソドックスな政策決定により、今後3~4年で有意義な安定化が見込める」と述べています。
 

この成長見通しは、新型コロナウィルス(Covid-19)が、世界的に、来年前半には「大方封じ込めが完了した」状態になっているという前提に基づいています。
 

スタンダード&プアーズは、格付け見通しについて、「中期的にフィリピン経済が平均以上の成長を遂げ、建設的な発展を促し、信用面を支えるとの期待を反映させている」とも述べています。
 

「Covid-19の景気刺激策で、フィリピンの財政面は悪化するでしょうが、金融のプルーデンス政策における政府の実績が、いくらかの余裕を生み出し、2021年には有意義な安定化が見込めるでしょう。格付けは、フィリピン経済の安定的な外部環境にも支持されています。」
 

スタンダード&プアーズはまた、過去数年で行われてきた改革が国内経済に効果をもたらし、政策面での支援と投資環境の改善により世界で最も急成長する経済国へと発展させたとも述べています。
 

「家庭/企業の健全なバランスシート、相当額の海外からの送金、そして適切に機能する金融システムに支えられ、フィリピン経済は建設的な軌跡をたどってきました。Covid-19流行前、フィリピンの失業率は数年にわたって下降を続けており、労働年齢人口も増加し、国の労働市場の強化されてきていることを示していました。」
 

フィリピン経済のパンデミックからの立ち直りを確実なものにするために、政府は1.7兆フィリピンペソ(約3.6兆円)相当の経済刺激策4つの柱を確立しました。スタンダード&プアーズは、これにより予算とのかい離は今年のGDPの7.3%まで広がると予想しています。
 

GDPに対するこの財政赤字レベルは、一般財政収支を、4過去10年で最も高いGDPの35%程度まで押し上げると見られています。しかし、スタンダード&プアーズは、同様の格付けがついている他の国々と比べると低いと述べています。
 

フィリピンの信用格付けと見通しの据え置きを受けて、カルロス・ドミンゲス財務大臣は、スタンダード&プアーズがフィリピン経済のレジリエンスを「明確に認識している」証拠だと述べています。

 
カルロス・ドミンゲス財務大臣は、「パンデミックに対応するための政府の4つの柱戦略により、人々の命を救い、コミュニティの保護に努める一方で、徐々に活動制限を解き、経済を再スタートさせ、人々を仕事に戻すことで、この世界的な公衆衛生上の緊急事態を乗り切りることができると信じています。」と述べています。
 

社会経済企画大臣代理かつ国家経済開発庁長官のカール・ケンドリック・チュア氏は、政府の財政上のゆとりが、「医療、インフラ、およびフードバリューチェーン全体」の必要なプログラムへ資金を回すきっかけになるだろうと話しています。
また、世界的パンデミックによる経済への影響からはどの国も逃れられないが、フィリピンの堅調な経済ファンダメンタルズと包括的な景気回復策は、成長へと軌道修正するための原動力になる、とも加えています。
 

フィリピン中央銀行のベンジャミン・ディオクノ総裁は、数年にわたる改革と安定的な政策管理により中央銀行には金融政策の余地があると述べています。
 

ディオクノ総裁は、「価格と財政の安定を目指す一方で、私たちは、究極的に国民の命と暮らしを守ることができるような政策を既存の枠にとらわれずに考えています。それは、この一生に一度の危機における私たちの責任であり、私たちのアプローチは、必ずやフィリピンのレジリエンスを証明するでしょう。」と述べています。

(出所:Philippines News Agency

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(トップ画像:Photo by Austin Distel on Unsplash )