2020/05/25
[ベトナム] 外国人保有割合議論が再加熱
住宅法の改正と外国人保有比率の上限引き上げから5年。不動産デベロッパーは今、規制の見直しと、外国人保有比率の上限を50%に引き上げるように求めています。政府がその提案を認識する一方で、実際にはすぐに変更するのは難しいと言われています。
ASEANの法律事務所ネットワーク、Zico Lawの共同エグゼクティブ・パートナー、ケヴィン・ホーキンス氏によると、現状の比率上限の引き上げは、法の改正につながるので、見直しを速やかに行うのは簡単ではないと言います。
「現在の30%は、住宅法で定められており、ベトナム国会(National Assembly(NA))のみが改正する権限を持っています。国会の開催は年2回のみで、次は10月で、上限変更提案は今年の議案には入っていません。」とホーキンス氏は説明しています。
さらに、草案が改正に至るまでには、他の機関や組織、一般国民にも意見の機会が与えられます。また、住宅法が改正されたとしても、政府と関係省庁は、関連するガイドライン・規制を改正するのに時間を要します。たとえば、レジデンシャル・アパートメントの外国人保有比率30%を変更するとなると、一戸建て住宅の外国保有比率10%にも影響を与えることになります。なぜなら、これらの保有比率は連動して決まっているからです。
また、政府は、市場海外からの投機を避け、マネーロンダリングを食い止めるという方向性に基づいて、外国人の30%という比率を決めています。
「ベトナムで外国人が住宅を購入することを許可した政策のもともとの狙いは、ベトナムに長く住む人たちを助けることでした。上限は、デベロッパーがミッドエンド、ハイエンドプロジェクトの在庫を減らすための機会を作り出すことではありません。」と、天然資源・環境省のダン・フン・ヴォー元副大臣は述べています。
さらに、国家の安全を守るために、外国人は、外国人への販売許可が出ているプロジェクトのユニットを購入することができるようになっています。つまり、国防にかかわるとして販売が禁止されているようなエリアのプロジェクトは購入できません。
インドチャイナ・キャピタル社のCOOマイケル・ピーロ氏は、Vietnam Investment Review紙に対して、ベトナムの外国人保有比率30%は、近隣諸国と比べると低く、タイでは49%、マレーシアやインドネシアでは外国人の保有比率(Foreign Ownership Limit(FOL))は存在しないと言います。
「ベトナムは世界でも急激な経済成長を遂げている国のひとつですが、国内の不動産書価格は、比較的低く、賃料利回りは東南アジアでも高い方です。バンコクの平均利回りが約4%なのに対して、ホーチミンシティでは6.5%程度となっています。」とピーロ氏は説明しています。
「ハイエンド・レジデンシャルは、ベトナム不動産市場でも最も好調なセグメントのひとつで、まだまだ成長の余地があると考えています。外国人保有比率を50%まで引き上げれば、デベロッパー、特にハイエンド、ラグジュアリーセグメントをターゲットにしているようなデベロッパーにとって重要なオポチュニティを与えることになります。」と加えています。
国内の多くのプロジェクトで、FOLはすぐに埋まってしまい、デベロッパー各社は、海外投資家からの高い需要を利用して価格を上げることができています。
Zico Lawのホーキンス氏は、レジデンシャル物件における外国人保有比率上限を30%から50%に引き上げることは、市場にとって、ひいてはベトナムのさらなる発展にとって、リーズナブルだろうとコメントしています。
また同氏は、「現在の上限は、エントリーレベルの保護として正当化されていましたが、市場が大きく成長した今、このような上限は理由になりません。外国人は一般的にはプレミアムレジデンシャル物件を求めるので、ベトナム人用の住宅がなくなるなどの悪影響が出たり、保有比率の上限を引き上げることで国家の安全保障に関する懸念が増えるということはないでしょう。」とも述べています。「外国人保有比率の引き上げは、デベロッパー各社がコロナの影響から立ち直るだけでなく、域内市場と足並みをそろえるためにもリーズナブルでしょう。」
ベトナムにおける香港ランド社のジェネラルマネジャー、カレブ・ラウ氏は、ベトナム物件のバイヤーの多くはアジア諸国から来ているものの、アメリカ、イギリス、カナダ、その他欧州国籍もまた需要という点では非常に重要な役割を果たしていると言います。
「もし外国人保有比率が引き上げられれば、良質な商品にプレミアムを払うことをいとわないバイヤーが増えて市場が有利になるため、ベトナムにより多くの投資を呼び込むことができるでしょう。」とラウ氏は言います。「外国人保有比率を30%から50%に引き上げれば、デベロッパーは潜在顧客基盤を広げ、世界での目標市場を多様化させ、ビジネスを持続させるのに一つの市場に依存することを避けることができます。」
インドチャイナ・キャピタル社のピーロ氏は、住宅法の改正により外国人にベトナム不動産購入を認めたことで、ベトナムのレジデンシャル不動産市場は大いににぎわってきたと言います。「域内でも最も魅力的な不動産市場へと変貌を遂げただけでなく、国内の不動産市場の発展を助け、国内事業者の業界への寄与度がますます増しています。」
ピーロ氏はまた、ベトナムのハイエンド物件セグメントが急成長するのに貢献したとして、特に大都市ハノイやホーチミンシティではそれが顕著だと述べています。
ピーロ氏は、いくつか新しい自由貿易協定が批准され、Covid-19によりベトナムへ生産拠点を移転しようとするグローバル企業が増える可能性がある中、ベトナムに住み働く外国人の数も増えるだろうと分析しています。「外国人の流入は、国内のレジデンシャル商品の需要を増やすことになりそうです。ベトナムでは高い利回りが達成できているので、高品質なコンドミニアムへ投資することは、可処分所得があるような人にとって、ベトナムへの投資は引き続き魅力的なものとなるでしょう。」
現在のFOLを緩和することは、大都市におけるプレミアムプロジェクトの売れ残り在庫を減らす効果もあります。
「レジデンシャル商品のFOLが引き上げられれば、公開会社の外国人保有比率の緩和とも相まって、ベトナム経済の展望は大きく変わり、ベトナムへの外国投資の流入が期待できるでしょう。」とピーロ氏は述べています。
(出所:Vietnam Investment Review)
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