2021/12/20
グリーンビル、とは何でしょうか。
環境負荷をできるだけ減らして、生物多様性などに配慮した環境にやさしい建物のことです。ビル・エネルギー管理システム(BEMS)の導入によるビル全体の省エネ化や、再生可能エネルギーの利用、ヒートアイランド現象対策、廃棄物の削減、屋上緑化など、さまざまな主体によるビルのグリーン化が進められています。
グリーンビルディング認証とは、建物における環境負荷の低減、利用者の快適性の向上などの取り組みについて、第三者が認証を与え、その性能を保証するものです。日本におけるグリーンビルの評価ツールとして、建築環境・省エネルギー機構によるCASBEEが有名です。また、日本政策投資銀行は、グリーンビル化の取り組みを支援するDBJ Green Building認証を行っています。
今日は、フィリピンとマレーシアのグリーンビル基準や認証制度について見ていきます。
■フィリピン
不動産サービスおよびコンサルタント会社JLLフィリピンは、入居者からの需要の高まりを受けて、グリーンビルを建設するデベロッパーが増えていると述べています。
「パンデミックにより、グリーンビルの需要の高まりを後押ししました。政府が政策やインセンティブで支援することで、また不動産会社が持続化を進め顧客にプロモーションをすることで、認知度はさらに高まるでしょう。」とJLLフィリピンのジョーイ・ラドヴァン副会長は述べています。
JLLのアジア太平洋地域の調査では、企業テナントの40%がすでにネットゼロカーボン排出目標を設定済み、40%が2025年までに目標設定を計画していると言います。
また調査では、アジア太平洋地域全体で、気候変動への対応として、グリーンでサスティナブルなスペースに重点を置く傾向が高まっています。企業テナント10社中7社が、プレミアムを払ってもグリーンビルを賃貸したいと回答しており、グリーンビル認証が稼働率を引き上げ、高い賃料と高いテナントリテンション(入居者保持)を引き出し、資産価値全体を高めるという約72%の投資家の考えを確認できる結果となりました。
フィリピンでは、グリーンビルとグリーンでないビルとの賃料プレミアムは2%~23%となっているようです。
フィリピンで広く使われているグリーンビル認証には、LEED、BERDE、WELL、EDGEがあります。ひとつずつ見ていきましょう。
LEED
LEEDとは、Leadership in Energy and Environmental Designの頭文字をとったもので、アメリカのU.S.Green Building Councilによる、世界で最も広く使われているグリーンビル格付けシステムです。実質的にすべての建物タイプに使うことができるLEEDは、健康的で、高効率、そしてコスト節約型のグリーンビルのための枠組みを提供します。LEED認証は、サスティナビリティの達成とリーダーシップのシンボルとして世界中で認識されています。
LEEDの歴史が始まったのは1993年。LEEDは1998年にはバージョン1,2001年にはバージョン2、直近では2019年にバージョン4.1と、常に進化しています。
LEEDは、複数のカテゴリーに分けてグリーンビル戦略が評価され、ポイントを獲得する方式です。獲得したポイント数に応じて、ランクは4つに分かれます。認証は3年ごとに更新です。
Platinum(プラチナム)80ポイント以上 | Gold(ゴールド) | Silver(シルバー) | Certified(標準認証) |
BERDE
Building for Ecologically Responsive Design Excellence (BERDE) は、フィリピン・グリーン・ビルディング・カウンシル(Philippine Green Building Council (PHILGBC) )が2009年に確立したグリーンビルの認証システムです。
BERDEの格付けは、1つ星~5つ星となっています。アセスメントチームが、設計、建設、運営のそれぞれのステージにおけるアセスメントの結果に基づいて、格付けの提案を行います。
★ 1つ星 | ★★ 2つ星 | ★★★ 3つ星 | ★★★★ 4つ星 | ★★★★★ 5つ星 |
51%~60% Good practice (優れた取り組み) | 61%~70% Ideal performance (理想的なパフォーマンス) | 71%~80% Exemplar performance (模範的なパフォーマンス) | 81%~90% Country leader (国のリーダー) | 91%~100% World Class (世界クラス) |
WELL
WELL Building Standard®は、空気、水、栄養、照明、フィットネス、快適さ、そして精神を通じて人の健康やウェルビーイングに影響を与える建築環境の特徴を測定、認証、モニタリングするためのパフォーマンス型のシステムです。
WELLは、アメリカの公益団体、国際WELLビルディング協会(IWBI)が運営しています。
WELLは、人が一生のうちの90%を過ごす建物と、建物の中の人の健康やウェルネスとの関係について探る医療研究機関に根ざしています。WELL認証を受けたスペースとWELL適合のコアおよびシェル開発は、健康、フィットネス、ムード、そして睡眠パターンを改善するような建築環境を創造するのに役立つと考えられています。
EDGE
世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が開発したEDGE(“Excellence in Design for Greater Efficiencies”)は、グリーンな建築のためのビジネスケースの証明と金融投資の可能性を開くための、測定可能かつ信頼できるソリューションへのニーズに応えるためのものです。 EDGEには、グリーン仕様にするためのコストとユーティリティの節約を算出するクラウド型のプラットフォームも含まれています。 2014年7月に発足したEDGEは立ち上がり資金の融資をSECO(スイス連邦経済省経済事務局)から受け、現在ではイギリス政府から資金提供を受けています。さらにオーストリア、カナダ、デンマーク、ESMAP(世界銀行エネルギーセクター管理支援プログラム)、EU,フィンランド、GEF(地球環境ファシリティ)、ハンガリー、日本からも資金提供を受けています。
EDGEの認証は3段階です。LEVEL1およびLEVEL2は更新の必要はありませんが、LEVEL3に関しては100%再生可能エネルギーの場合は4年ごと、カーボンオフセット購入の場合は2年ごととなっています。
LEVEL1 EDGE Certified (EDGE認証) | LEVEL2 EDGE Advanced (EDGEアドバンス) | LEVEL3 Zero Carbon (ゼロカーボン) |
エネルギー、水、材料に含まれるエネルギーの削減20%以上 | オンサイトのエネルギー削減40%以上 | オンサイトまたはオフサイトでの再生可能エネルギー100%、またはカーボンオフセット購入込みで100% |
■マレーシア
マレーシア不動産市場でも「グリーンビル」が流行語になっているようです。デベロッパー各社は、環境に配慮するマイホーム購入者だけでなく、環境意識における企業の社会的責任を取り入れつつ、運転コストをさげようとする法人からの、ますます高まるグリーン物件の需要に応えようとしています。
マレーシア不動産市場でも「グリーンビル」が流行語になっているようです。デベロッパー各社は、環境に配慮するマイホーム購入者だけでなく、環境意識における企業の社会的責任を取り入れつつ、運転コストをさげようとする法人からの、ますます高まるグリーン物件の需要に応えようとしています。
マレーシア政府もグリーン分野の拡大を図っています。政府はこれまでに、持続的開発に関する様々な政策やスキームを実施してきました。これには、グリーン技術ファイナンススキーム(Green Technology Financing Scheme)、グリーン投資にかかる税インセンティブ(Green Investment Tax Incentives)、マレーシア・グリーン技術・気候変動センター(MGTC)のMyHIJAUマークプログラムなどがあります。
Green Building Index(GBI)
GBIはマレーシア初の包括的なグリーンビル認証システムです。
GBIの組織は、マレーシア建築家協会(PAM)およびマレーシアコンサルティングエンジニア協会(ACEM)によって、GBI認証の基準作りと実施のために、2009年に設立されました。GBIファシリテーターおよび認定人の訓練も行っています。
GBIの格付けシステムは、独立機関であるGBI認定パネル(GBI Accreditation Panel(GBIAP))によって厳しく規制されています。GBI認証を受けるための基準には、エネルギー効率、屋内環境品質、材料資源、持続的なサイト計画および管理、革新性、節水の6つがあります。GBIの組織は、マレーシア建築家協会(PAM)およびマレーシアコンサルティングエンジニア協会(ACEM)によって、GBI認証の基準作りと実施のために、2009年に設立されました。GBIファシリテーターおよび認定人の訓練も行っています。
GBI格付けは、基準に基づいて獲得したポイントに応じて決定されます。認証は3年ごとに更新となります。
Platinum(プラチナム) | Gold(ゴールド) | Silver(シルバー) | Certified(標準認証) |
86~100ポイント | 76~85ポイント | 66~75ポイント | 50~65ポイント |
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(出所:Goo、USGBC、Philippines GBC、GRESB、Edge、Philstar、Green Building Index、iProperty)
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