[マレーシア] 中国系のジョホールメガプロジェクト勢いつかず

2022/03/24


新型コロナウイルスの大流行が始まって2年、マレーシアはついに国境を再開しようとしています。しかし、シンガポールの国境近くのジョホールにて、中国のデベロッパーが進める1,000億ドルのメガシティプロジェクトは立ち往生状態です。



総合開発のフォレスト・シティ(Forest City)は、マレーシア・ジョホールの4つの埋め立て島から構成されるプロジェクトですが、コアとなる中国とシンガポールの投資家をなかなか集められずにいます。すべての開発が終了するのは2035年の予定です。



プロジェクトの3分の2を所有するのは、主デベロッパーであるカントリー・ガーデン・ホールディングス(Country Garden Holdings)という広東省を拠点とする会社です。残りは、マレーシア企業が所有しています。



日経アジアの問いかけに対し、カントリー・ガーデンは、「パンデミックが長引くにつれて、法人投資、観光・休暇の方向性だけでなく、他のプロジェクトや開発アイディアにも変化がありました。これは、確実に私たちの事業にも影響を与えています。」と話しています。



ジョホールの南端に建設されているフォレスト・シティの規模は、17.4平方キロで、シンガポールのセントーサ島の3倍の大きさです。複合用途の開発には、レジデンシャル、レジャー、商業・工業スペースがあり、計画では、住人が簡単にシンガポールに渡航できるように、フォレスト・シティ専用の通関・入国チェックポイントが設けられることになっています。



しかし、パンデミックにより海の埋め立てプロセスはもちろん、全体の開発に遅れが出ています。8つのフェーズに分けて開発が進められることになっていますが、今のところ最初の島が開発されたのみとなっています。



国境が閉鎖されたことで、1つ目の島の事業にも打撃を与えています。1つ目の島には、レジデンス、インターナショナルスクール1校、リテール・商業スペース、高級ホテルに18ホールのゴルフコース2本が入っています。



カントリー・ガーデンは、パンデミックにより現行の事業も影響を受けており、ホテル稼働率も大幅にダウンしただけでなく、ゴルフコースの平均日当たり利用客数も激減していると述べています。



具体的な数字は明らかになっていませんが、同社によると、フォレスト・シティ内の複数のプロジェクトについては、販売は安定的だということです。また、マレーシア市場を開拓していくという思いは変わらず、オンライン販売やバーチャルツアー、ライブビューイングといったデジタルサービスを活用して、フォレスト・シティに直接来られない人にもアプローチしていくことにしています。



マレーシアは、他の東南アジア諸国と同様、コロナの感染の波と戦うべく、様々な隔離・渡航制限を実施してきましたが、経済と企業を刺激すべく、緩和をしようとしています。



イスマイル・サブリ・ヤーコブ首相は、Covid-19との共生に向けて、4月1日からすでに外国からの渡航者に対して隔離なしの入国を認める旨を発表しています。



フォレスト・シティはこれまでに20,000戸のレジデンシャルユニットの引き渡しを終えています。2035年に4つ目の島の完成までに見込んでいる住民70万人の計画を大幅に下回っています。



オーナーの大半を占めるのは、中国人、マレーシア人、シンガポール人です。他には、ベトナム、インドネシア、台湾、香港、韓国、日本のバイヤーも付いているようです。



カントリー・ガーデンは、売上高では中国最大のレジデンシャルデベロッパーです。中国国内のデベロッパーが昨夏より流動性の問題で混乱する中、もっとも回復力のある民間デベロッパーのひとつとみられています。



大きなニュースとなった中国恒大グループも含む同業各社が、債務の支払いを滞らせたり、債務不履行を宣言したりする中、カントリー・ガーデンは債権者への約束を守り続けています。1月下旬には、4億2,500万ドルのオフショア社債を全額償還しています。



▶関連して読む

[東南アジア]論評: 恒大集団問題は、東南アジア不動産市場・建設サプライヤーに広がるか
[フィリピン] 恒大集団問題で気になるデベロッパー各社の負債は?




また、外部資金の調達もできています。2022年1月には4年物の39億香港ドル相当の返還社債を売り出し、2月には100%子会社が、2年物の中国国内のミディアム・ターム・ノート(MTN)の発行のための50億元の限度枠の登録許可を受けています。



加えて、中国初の完全株式制の銀行、招商銀行(China Merchants Bank)も、3月初旬、カントリー・ガーデンの将来のM&Aの資金に備えて150億元の融資枠を設定しています。



業界内のM&Aの推進は、現在の危機に対応するための中国政府の取り組みの一部です。しかし、カントリー・ガーデンは、政府系の銀行が、民間のデベロッパーの取得の目的で融資枠を設定した最初のケースだと言われています。



ムーディーズとフィッチ・レーティングスでは投資適格債に相当するBBBを、S&Pグローバルレーティングスでは、信用リスクの高い投機的格付けの一番上に相当するBaとなっています。



S&Pは、最近の実績から、カントリー・ガーデンが「競合他社よりも堅固な資金調達能力がある」と認めています。しかし、アナリストのリッキー・ツァン氏は、業界全体が低迷する中では特に、住宅需要が概して弱めの低所得の都市のリスクにさらされることで、デベロッパーの売上に圧力がかかるだろうと予想しています。



2月の契約販売は327.6億元と、前年同月比で30%減となり、1月の10%減から悪化しています。



会社の流動性は他社と比べると比較的しっかりしているように見えますが、カントリー・ガーデンの香港上場株は、3月14日、15日に、前年の50%近くにまで割りこみました。現在は回復傾向ですが、同社は、の株価の暴落について、オフショアおよびオンショア資金調達について、ネット上の「根拠のない」コメントが原因であると述べています。



不動産コンサルタントのラヒム&コー・インターナショナルは、最近発表したレポートで、2021年1月~9月で、マレーシアでは201,065件の不動産取引、総額980億リンギットがあったと発表しています。取引量は、前年同期比で1.8%減となりました。



レポートでは、工事が完了してもなお売れ残っている「オーバーハング」状態の物件にも焦点を当てています。2021年9月時点で、サービスアパートおよびSOHOを含めて、約56,734戸のレジデンシャルユニットがオーバーハングとなっていました。これらのユニットのほとんどは高層物件です。



それでもなお、カントリー・ガーデンは、シンガポールに近いという地理上の利点と十分に発達した地元の経済基盤を背景に、ジョホール開発に自信を見せています。



「カントリー・ガーデンがマレーシア市場に参入して9年経ちます。この地でビジネスを続け、長期的な開発を行っていきます。」と話しています。



「政府が積極的にパンデミックのコントロールを行い、景気回復を促すための政策やインセンティブを打ち出してほしいと考えています。私たちもできることを行い、経済の発展に向けて貢献していきたいと考えています。」と加えています。




(出所:Free Malaysia TodayBloomberg

(画像:Photo by Eldines Hoo on Unsplash )