2020/08/13
[フィリピン]不動産市場動向(2020年7月)
不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年7月のレポートを発表していますのでご紹介していきます。フィリピン初となる不動産投資信託上場に向けて、アヤラランドがAREITの準備を進めています。ダブルドラゴンも続くとみられており、今後のフィリピンREITの動きが注目されます。
■不動産市場全般
・IT-BPM(ビジネスプロセス管理 )セクターの職を生み出すことで、郊外にもアウトソーシングを発展させようという努力から、情報通信技術省(DICT)の「ネクスト・ウェーブ・シティーズ」プログラムをリブランディングした「デジタル・シティーズ2025」プログラムでは、5か年で、制度・インフラ開発、マーケティング・販促介入などに力を入れていく新しい「デジタルシティ―」25都市を選定しています。特に、選定された都市では、インターネット接続性の改善や労働力のスキルアップや再教育などが重点的に行われます。
・アヤラランドの不動産投資信託AREITの売出価格は1株当たり27ペソとなりました。株式公開にあたって、約4.57億株の普通株式と、追加割当オプション付4,600万株が売り出されます。AREITの売出期間は7月28日から8月3日、上場日は8月13日となっています。一方で、ダブルドラゴン・プロパティーズのREIT上場申請が8月中に行われる見通しで、株式公開は10月を目指しているということです。
▶アヤラランドのREITに関するPropertyAccess.coの過去の記事は「こちら」
■オフィス
・フィリピン通信技術・ビジネスプロセス協会(Information Technology and Business Process Association of the Philippines (IBPAP))は、2020年のBPOセグメントは低迷すると予想しています。調査対象となった協会会員70社のうち約18%が収益減、36%が横ばいと回答しています。パンデミックの悪影響は特に小企業に見られます。というのも、大企業と比べると、契約を逃したことによりかかる費用をカバーできる能力が劣るからです。
・セブ・エクスチェンジのフェーズ1(39階建てのグリーンオフィスの最初の15フロア)が、2020年第4四半期に引渡しを迎えようとしています。コミュニティ隔離措置の期間は建設工事が一時的に停止していましたが、引渡しは当初計画通りに行われる予定です。セブ・エクスチェンジは、アーサランド・コーポレーションのセブ市初となるプロジェクトで、中部ビサヤ地域のBPO企業の需要の増加に応える形で設計されたものです。
▶セブITパーク−サブリース提供の区分オフィス「セブ・エクスチェンジ」の詳細は「こちら」
・総賃貸可能面積(GLA)約99,874平米、11階建ての新しいオフィスビルがマニラ市にお目見えします。ドニャ・エレナ・タワーは、マンダルヨン市へのアクセスも可能、現在進行中のスカイウェイ・ステージ3プロジェクトの出入り口付近となります。
■レジデンシャル
・DMCIホールディングスは、低迷する販売と不確定要素の多いビジネス環境を背景に、2020年に計画していた設備投資を、当初の404億ペソ(約881億円)から194億ペソ(約423億円)に削減します。DMCIホームズの削減額が最大で、310億ペソ(約676億円)から140億ペソ(約305億円)に削減されます。一方で、DMCIホームズは、シェリダン・タワーズ(Sheridan Towers)の2棟目を完成させ、7月、8月で一部引渡しを開始します。
・I-Landは、テクノロジー・プロバイダであるシグネット・プロパティーズと提携し、パラニャケ市の2ヘクタールのコミュニティに立つ6棟から構成される中層開発物件「I-Landレジデンシーズ - スーカット」の販売活動を行います。シグネット・プロパティーズが、I-landレジデンシーズ - スーカットのオンライン販売とマーケティング活動を主導し、2023年の引渡しまでに満室を目指します。
・メガワールド・コーポレーションは、新しいコンドミニアムプロジェクト「ザ・ピナクル」を立ち上げ、イロイロ市にそのポートフォリオを拡大します。ザ・ピナクルは、20階建てのコンドミニアムで、メガワールドが72ヘクタールのイロイロ・ビジネスパークに手掛ける6つ目のレジデンシャルプロジェクトです。完成すれば、イロイロ・ビジネスパークの現在のレジデンシャル在庫1,741戸に、新たに572戸が加わることになります。ザ・ピナクルは、6年後に完成予定で、売上は15億ペソ(約33億円)に到達する見込みです。メガワールドは、バコロド市のアッパーイースト・タウンシップに、14階建てのレジデンシャルコンドミニアム「ワン・マンハッタン」も建設中です。ワン・マンハッタンは、総戸数260戸、2025年完成予定です。メガワールドは、パンデミックによりビジネスに混乱が生じたにもかかわらず、2020年前半期のレジデンシャルプロジェクトの予約販売で380億ペソ(約828億円)を売り上げたと報告されています。
■ホスピタリティ
・パンデミックにもかかわらず、PHリゾーツ・グループ・ホールディングスが手掛けるセブ市の「エメラルド・ベイ」は、以前は2022年第2四半期にオープンと発表されていましたが、2021年第4四半期に前倒しされました。総合観光リゾート・エメラルド・ベイがオープンすれば、客室830室の5つ星ホテル、122台のカジノテーブル、600台の電子カジノ機が利用可能になります。また、8,000㎡のテーマ型リテール店舗、レストラン、アクティビティセンターも設けられることになっています。
・Covid-19危機対応として、ロビンソンズ・ホテル・アンド・リゾーツは、「ホーム・トゥ・ゴー」および「ワーキング・オン・ザ・ゴー・プライベートオフィス」として、一部の客室を長期滞在用またはプライベートオフィスに転換します。このワーキング・オン・ザ・ゴープライベートオフィスでは、オルティガスとマンダルヨンの「ゴー・ホテル」と、マグノリアとグリーンヒルズの「サミット・ホテル」の全客室の約30%を利用します。ホーム・トゥ・ゴーは、ゴーホテル・オーティス・マニラ、ゴーホテル・オルティガスセンター、ゴーホテル・マンダルヨンで利用可能です。
■工業/物流
・アボイティスランドは、デベロッパーや投資家の関心が大都市以外のエリアにシフトしていることを認識し、バタンガス州の複合用途開発LiMAテクノロジーセンターの拡大を計画中です。LiMAテクノロジーセンターは、ホテル、リテール、公共交通機関ターミナルを備えたビジネス街のある工業地区で、「カンポ・ベルデ」「サマーヒルズ」の2つのレジデンシャルも備えています。また、アボイティスランドは、企業のパンデミックとの戦いを支援すべく、セブにあるマクタン経済特区II(Mactan Economic Zone II)の賃料50%割引を5か月延長することを決めました。
・低迷する世界経済とともに、フィリピンの2020年の投資計画も減少傾向です。2020年1月~5月で、フィリピン経済特区庁(PEZA)が承認した投資計画は225億ペソ(約491億円)、昨年同期と比べると32%減少しました。サプライチェーンの混乱に加えて、フィリピンの輸出企業は公共交通運行状況が限定的であったことから、従業員が足りない状態となっています。
■リテール
・貿易産業省(DTI)は、消費者が支出に慎重な状態が続いており、また一方で、多くがオンラインショッピングに移行したことから、ショッピングモールの客足は伸び悩んでおり、コロナ前の半分ほどのレベルだと述べています。実に、6月に調査が行われた2,135社のうち約25%は一時的または永久的に営業を停止しています。
・人口が多く集中するビジネス地区に警戒を示す消費者が多いことから、ポストコロナの新規ショッピングモール開発は、大型のリージョナル・モールと呼ばれるものから、タウンセンターへと移行するでしょう。パラフォックス・アソシエーツの首席建築士・都市計画家のフェリーノ”ジュン”・パラフォックスJr.もまた、戸建て型のレストランや店舗・キオスクなどへのシフトが見られると述べています。
(出所:Cushman & Wakefield)
(トップ画像:Photo by Edsel Pingol on Unsplash )
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