[フィリピン]不動産市場動向(2021年5月)

2021/06/24

[フィリピン]不動産市場動向(2021年5月)


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2021年1月のレポートを発表しています。


■不動産市場全般

・フィリピン中央銀行(BSP)の報告によると、不動産デベロッパー向けの貸出残高が2020年6月末で2.2兆ペソ(約5.0兆円)に達し、2019年6月の1.98兆ペソ(約4.5兆円)から11.2%上昇しました。貸付残高は、2017年6月から増加しており、2020年6月は過去3年で最高レベルとなりました。同期間における商業不動産ローンについても、2020年6月末時点におけるフィリピン主要銀行の貸付残高の20.73%を占めており、前四半期の20.31%から増加しました。同様に、国の銀行の不動産ローン不良債権率も、1年前の1.74%から増加し、2.77%となっています。


・クッシュマン&フィールドは、不動産投資は、経済を支える複数の関連産業を刺激するため、国の経済回復のペースを決めていくのに欠かせないとしています。同社は、フィリピンにおける商業不動産は、その確固たる基盤から、パンデミック後にまた回復すると見込んでいます。過去の不景気の際にも明らかであったように、銀行システムのレジリエンスをさらに高めていくためには、銀行および金融機関の不良資産(NPA)や不良債権(NPL)の管理・処分を支援すべく、FIST法(金融機関戦略譲渡法)法案の通過が重要になってくると述べています。

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■オフィス

・不動産会社各社がますます不動産投資信託(REIT)への関心を寄せており、フィリピン資本市場の魅力は明らかです。アヤラランドダブルドラゴンのREIT上場が成功をおさめ、フィリンベスト・ランドロビンソンズ・ランドも株式公開に向けた届出を証券取引委員会(SEC)に行っています。さらに、メガワールドビスタランド&ライフスケープスもまた、REIT上場の可能性を表明しています。現在、REITのポートフォリオは、アヤラ、ダブルドラゴン、そして今後可能性のあるフィリンベストとロビンソンズランドの場合だと、オフィスプロジェクトを中心に構成されています。フィリピン証券取引所は、有料道路や倉庫、病院といった異なる業種の会社にもREIT上場を促したい考えです。


・パンデミックが、不動産会社も含めて様々な企業に財務的な負荷を与えました。経済が「コロナ後」のシナリオへと移行する中、REITは資金調達をし、積極的な投資家からのオポチュニティを掴むためには魅力的な選択肢だとクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。


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■レジデンシャル

・パンデミックが始まって1年、不動産ポータルプロバイダのLamudi Philippinesは、2021年第1四半期、レジデンシャル不動産価格が回復の兆しを見せていると述べています。Lamudiは、2020年第1四半期、ページビュー数は激減したものの、レジデンシャル不動産購入予定者の約34%ほどが、2021年に住宅を購入したい旨を回答しており、こういった傾向とも合致しています。レポートではさらに、2021年第1四半期の高級レジデンシャルセグメントのページビューが前年同期比で33.7%増となったことも指摘しています。2,000万ペソ(約4,560万円)超の物件を指す、高級レジデンシャル市場は、昨年、前年同期比で222%増という驚異的なページビュー数を記録しました。2020年で上向きのトレンドを見せた唯一のセグメントでした。一方で、45万ペソ(約102万円)未満の物件が、アフォーダブルレジデンシャル市場で急速な立ち直りを見せています。2021年第1四半期のページビュー数は前年同期比で46%増となったということです。


・ハイエンドレジデンシャルとメトロマニラ外の物件は回復力を保ちましたが、ミッドエンドレジデンシャルの完全回復は国内経済全体の改善にかかっています。レジデンシャル需要は、経済状況が改善するにつれて高まると見られており、同セクターへの投資意欲も高まると見られています。


■ホスピタリティ

・サービスアパートは、コロナウィルスのような危機的な状況下でも回復力を見せているため、投資するには良さそうだ、とクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。長期滞在の法人顧客が、確実かつ安定的な収益を提供してくれるからです。サービスアパート需要を高めるその他の要因としては、成長を続けるビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業界や、主要ビジネスエリアの急速な都市化などが挙げられます。パンデミック下における「ワーケーション」が一般化していることも、在宅勤務やフレックス勤務がますます人気になる中で、需要を支える新興トレンドの一つです。


・海外からの宿泊客やレジャー目的の旅行者といった、他の需要のけん引要素がない中で、サービスアパートは、従業員に宿泊先を提供するBPO業界をさらに活用していくことができるだろうとクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。人口構成の変化、モビリティの拡大、そして働き方の将来が変わってきていることが、この市場の進化を促進することになりそうです。クッシュマン&ウェイクフィールドは、サービスアパート市場が今後数年にわたってさらなる進化を遂げると考えています。なぜなら、サービスアパートのコアターゲット市場の期待値や要件が今後もますます高まり、常に新しいコンセプトを要求していくだろうからです。


■工業/物流

・2020年のフィリピン国内におけるEコマースによる収益は、2019年の9.53億USドル(約1,056億円)から大幅に増加して44.2億USドル(約4,899億円)と推定されています。収益の伸び率では、Eコマースは年間16.7%成長し、2025年までには76億USドル(約8,424億円)に到達すると予測されています。Eコマース業界のこのような輝かしい成長は、倉庫やフルフィルメントセンター(*)の需要がますます高まることで、サプライチェーンと物流セグメントに大きなオポチュニティをもたらします。

(*) フルフィルメントセンター:通信販売で注文を受けた商品の発送センターのこと。


「原材料、サプライヤー、製造者、ディストリビューター、小売業者、消費者」という基本的なエコシステムから、進化を遂げてきている今、複雑化するサプライチェーンに対応するためにデジタル化は欠かせないものになっています。フィリピンの売上に対する物流コストの割合は27.3%で、ベトナムの16.3%、インドネシアの21.4%、タイの11.11%と比較すると依然として高いですが、島国だということを勘案すると、巨大なインフラプログラムにより、フィリピンの物流とサプライチェーンを改善すべく、このような問題が軽減されるとみられています。


・物流業界へのインフラの課題に完全に対応するのは長期的な問題になりそうですが、物流各社は、Eコマースなどの新興市場が課す透明性とスピードの要求に応えるような戦略を練ることができるでしょう。デジタル化への投資は、Eコマース業界が物流にもたらす成長に大きな恩恵を与えてくれそうです。


■リテール

Euromoney Internationalのレポートによると、フィリピンのリテール売上は2022年にはパンデミック前のレベルにまで戻ると予測されています。この予測は、景気が2021年末までにコロナ前のレベルに戻ってリテール業界の回復のきっかけとなることが前提となっています。コロナウィルス感染関連の懸念が残る中で、Eコマースはリテール業界を刺激するのに重要な役割を担うことになりそうです。レポートでは、スーパーマーケットとコンビニエンスストアの中間のようなハイブリッド型の店舗「コミュニティストア」の数が急激に増えていることも挙げています。必需品を気軽に手に入れたいという消費者のニーズに沿った形となっています。レポ―トではさらに、東南アジアのリテール産業が2020年に6%縮小した一方で、域内のEコマース活動を加速させたことについても触れられています。東南アジアのリテール業界は、域内の景気がパンデミックからの回復を遂げるにつれて、今後5年間で、年平均6.7%成長すると予測されています。


・オンラインリテールが急速に拡大する一方で、従来型のリテールも中期的に、景気の回復とともに回復することが予想されています。主には、根強いモール文化を持つ比較的若い世代がこれをけん引しそうです。リテール業界は、実際の体験とオンライン体験がより融合した、オムニチャネルのマーケティング戦略へと進化していくだろうとクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。


(出所:Cushman &Wakefield

(画像:Photo by Brian Kairuz on Unsplash )