[シンガポール]不動産価格インデックスの伸びがゆるやかに、投資過熱抑制策の効果か

2022/04/21


シンガポールの個人住宅の全体の価格インデックスは、2022年第1四半期はわずかに0.4%増と、8四半期連続の上昇となりました。しかし、政府が2021年12月に投資過熱抑制策を導入し、2021年第4四半期の5%上昇からは明らかにペースが落ちています



投資過熱抑制策以外にも、アナリストは、中国正月のお祝いで取引活動が静かだったことに加え、Covid-19感染者数の急増で内見数が減ったことや、金利の上昇、さらにはロシア・ウクライナ紛争なども、今回のペースダウンに影響したと分析しています。




2022年第1四半期の住宅価格がわずかに上昇したことを受けて、アナリストはレジデンシャル市場は、投資過熱抑制策と金利上昇をきっかけに、比較的控え目な状況が続くだろうと述べています。



しかし、マイホームを求める人からの住宅需要は依然として高く、売りに出されるプロジェクトが増えるにつれて、取引件数も増えてくることが予想されています。




シンガポールの不動産仲介Huttonsによると、2022年第1四半期にデベロッパーが発売した物件は700~1,000戸と、前年同期の3,716戸と比べると大幅に減少、一方で販売数は1,800戸と前年同期から約49%減少しました。一方で、不動産仲介ERAのリサーチヘッド、ニコラス・マック氏は、2022年第1四半期に2,600~2,750件の住宅売買が行われ、2021年第4四半期から42%~44%減少したと述べています。



アメリカ系不動産サービスCBREの東南アジア担当リサーチヘッドのトリシア・ソン氏は、住宅市場の需要は、2022年第2四半期も、投資過熱抑制策がバイヤー間に浸透して「比較的抑えられた」状態が続くと予想しています。一方で、魅力的な商品が市場に出てくれば、販売量には弾みがつくだろうと述べています。



「短期的に、レジデンシャル市場は、ロシア・ウクライナ紛争に関連する地政学的な不確実性の高まりを受けて、安全な避難場所を求めた投資が行われることで、一部恩恵を受けるかもしれない。」とも加えています。



アナリストの中には、シンガポールの渡航者受け入れ開始にともない、コロナ対策措置の緩和により、外国人バイヤーやショールームの客足も延びる可能性を指摘している者もいます。



CBREのソン氏は、販売開始する物件が限られることから、2021年の13,000戸超から減って、今年は9,000~10,000戸が取引されると予測しています。2022年の価格については、横這いから3%程度を上限としたわずかな上昇を予測しています。



2022年第1四半期の住宅価格のわずかな上昇は、2018年7月に行われた前回の投資過熱抑制策の導入からの旅立ちを意味します。導入後の2018年第4四半期、不動産価格は0.1%下落しました。Huttonsのリサーチ部門シニアディレクターのリー・ズイ・テック氏は、「2022年第1四半期の売れ残り在庫レベルは、依然として非常に低いレベルを保っていますので、予想の範囲内だ」と言います。「Huttonsは、2022年3月末時点の売れ残り在庫を13,000戸と推定しており、2021年第4四半期から9.3%減少しています。」と加えています。



個人住宅価格の上昇をけん引したのは、戸建て物件です。投資過熱抑制策をものともせず、2021年第4四半期の3.9%上昇から、さらに前四半期比で4%上昇しました。アナリストは、戸建て物件を支えたのは、限定的な在庫、そしてGCB(Good Class Bungalow)と呼ばれるハイエンドバンガローを中心とした中古市場の取引だと分析しています。



さらに、アンモーキオエリアで発売された107戸が入るフリーホールドの区分所有住宅プロジェクト「Belgravia Ace」が発売当初から高い需要があったようです。不動産ポータルPropnNexによると、発売された週末で74戸が平均価格440万シンガポールドル(約4.1億円)で販売されたということです。



不動産仲介・コンサルタントのナイトフランクのリサーチヘッド、レオナルド・テイ氏は、過去4年、戸建て物件の在庫は73,000戸超のレベルを保っており、今後も大きく増える見込みはないと述べています。テイ氏は、「シンガポールの戸建ては、供給が限られていることから、不動産市場の中でも最も好調なアセットクラスのひとつです。過去10年、常に前年を上回ってきました。」と話しています。



一方で、戸建てでない物件の価格は、2021年第4四半期の5.3%増から一転して、2022年第1四半期は0.1%下落しました。



地域別に見ると、金融街など繁華街を含むコア・セントラル・リージョン(CCR)の戸建てでない物件の価格は、2021年第4四半期に2.7%上昇しましたが、2022年第1四半期には0.5%下落しました。これは、一般的にラグジュアリー物件を狙ってくる投資家や外国人バイヤーが、投資過熱抑制策の影響をまともに受けたからです。



コア以外のセントラルエリア(RCR)では、価格は、2021年第4四半期には6.7%上昇を記録しましたが、2022年第1四半期は3%のマイナスとなりました。



不動産サービスJLLのリサーチ&コンサルタント事業シニアディレクター、オン・テック・フイ氏は、「RCRの戸建てでない物件の価格により大きな修正が現れたのは、2021年のインデックス全体の上昇率10.6%を大幅に上回る16.3%上昇を2021年に叩き出しているからだと思われます。」と述べています。



不動産サービス コリアーズのリサーチヘッド、キャサリン・ヘイ氏は、One Pearl BankなどのRCRのプロジェクトが価格を下げて取引されたこともまた、今回の下落につながったのではと話しています。



しかし、郊外エリアはこのトレンドに逆らいました。マイホームとして購入する人に支えられ、セントラル以外のエリア(OCR)の価格は、2022年第1四半期も1.9%上昇しました。しかし、そのペースは2021年第4四半期の5.7%からは落ちてきています。



不動産サービス クッシュマン&ウェイクフィールドのシンガポール担当リサーチヘッドのウォン・シャン・ヤン氏は、OCRの取引件数は減少したものの、OCRの物件は投資過熱抑制策の恩恵を受けた部分があると述べています。というのも、RCR市場への投資を諦めた投資家が、より手頃な価格の物件に流れたからです。



同時に、供給は厳しい状況が続きました。エージェント検索プラットフォームOrangeTee&Tieのリサーチ&アナリティクスのシニアバイスプレジデント、クリスティン・サン氏は、「今年OCRには大型物件がほとんどなく、発売済みの売れ残り物件の在庫も毎月着実に減ってきていますので、郊外エリアの新規供給は不足しています。」と話しています。



今年第2四半期に発売が予定されているのは、フェニックス・ロードの「The Arden」(Qingjian Realty)、イシュン・アベニュー9のエグゼクティブ・コンドミニアム「North Gaia」(Sing Holdings)、そして、ノーザンバーランド・ロードの「Picadilly Grand」です。



Propnex Realtyのチーフ・エグゼクティブ、イスマイル・ガフォール氏は、「インフレと建設コストの上昇で、新規販売物件の価格は堅調に推移すると予測しています。」と話しています。





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(出所:Business Times

(画像:Photo by Stephanie Yeh on Unsplash )