2021/01/15
[マレーシア] 非常事態宣言で何が起こる?
2021年1月12日、マレーシアは非常事態に入りました。コロナウイルスの感染状況によって、8月1日まで、もしくはそれより早く終了することもあるということです。
マレーシア国内でCovid-19感染者数が急増、累計の感染者数が13万8000人を超え、医療システムが極限に達しつつある中、王によって非常事態が宣言されました。
前日の1月11日、政府はCovid-19制限措置の強化を発表、5つの州と連邦直轄領を2週間の活動制限令(MCO)に戻したところでした。
ムヒディン・ヤシン首相は、この非常事態宣言は軍事クーデターではなく、夜間外出禁止令などは執行されないことを強調しています。経済活動は継続し、人々も出勤が可能、一方で、ビジネス、貿易、産業は、標準作業手順(SOP)を厳守しながら、通常通り営業が可能だと説明しています。
マレーシアの非常事態宣言とは?
憲法第150条(1)では、マレーシア王が重大な緊急事態が存在し、国内またはその一部における安全、経済活動、公的秩序が脅威にさらされているとすると確信したとき、非常事態宣言を発令できるとしています。
マレーシアが最後に非常事態宣言を発令したのは1969年の5月13日事件です。夜間外出禁止令が出され、議会のルールはその後1971年2月に再確立されました。
現在のCovid-19パンデミックは、国民の経済活動の大きな脅威となっており、今回の非常事態宣言を発令するに至ったと首相は説明しています。
非常事態宣言の機関は、議会および州の立法議会は、王が定めるときまで開催されません。内閣および州評議会は機能を続けます。また、連邦政府および州政府の行政および公共サービスは、今回の非常事態宣言の影響を受けないということです。
非常事態宣言中には何が起こる?
Covid-19感染拡大を抑制するために、私立病院の資産、私立病院の土地、建物、または動産の一時的な所有権、または患者の治療のために私立病院の資源利用要請にかかる事項について緊急条例を発令することができます。
政府もまた、政府機関、特に公立病院の負担を和らげるよう、民間の医療機関を含む民間セクターのさらなる関与を要請しています。条例により、民間セクターの人的資源、専門知識、設備、研究設備、ユーティリティの支援が得られるようになります。
軍に執行権限を与える条例の発令もできるようになります。非常事態宣言の発令に伴い、軍に不法入国者などを逮捕できる権限を付与することで、国境警備も強化されます。
さらに、1988年感染症予防管理法(Prevention and Control of Infectious Diseases Act)を改定する条例を発令することで、Covid-19パンデミックの抑制に関連する法令に違反する者への罰金を増額することもできます。これにより、執行の効果を高めることができると首相は説明しています。
王は、経済的破壊行為、独占、物価の過剰な上昇に対抗するための条例も発令することができます。
選挙の開催は?
非常事態宣言発令期間内は、総選挙、州選挙、中間選挙は行われません。
総選挙の開催を求める一部の政党については、ムヒディン首相は、選挙を行わないことを意図しているわけではなく、Covid-19パンデミックが主な課題なのだと説明しています。
非常事態の期間を延長するか、8月1日より前に終了するかを決定するために、重大な非常事態が続いているかどうかを王にアドバイスするための独立した特別会議も条例によって設置されることなります。
首相は、Covid-19パンデミックが落ち着くか、完全に収束するかして、選挙が安全に実施できるようになったらすぐに選挙を実施する意図を示しており、今は政治家同士の意見の相違はさておき国民と一致団結してパンデミックと戦うべきだと述べています。
活動制限令(MCO)は?
連邦直轄領(クアラルンプール、プトラジャヤ、ラブアン)およびペナン州、スランゴール州、マラッカ州、ジョホール州、サバ州では、1月26日まで最も厳しい活動制限令(MCO)が実施されます。
州をまたいだ移動は、国内全土で禁止されますが、MCOの州では地区をまたぐ移動も禁止となります。
結婚式披露宴、会議、宗教上の集まり、セミナー、コース、集団スポーツなどの社会活動も不可となります。
その他6州(パハン州、ペラ州、ヌグリ・スンビラン州、クダ州、トレンガヌ州、クランタン州)は条件付きMCO(CMCO)が、2州(ペルリス州、サラワク州)は回復期のMCO(RMCO)が実施されます。
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MCOの地域では、世帯あたり2人まで日用品の買い物のために外出することが可能ですが、移動範囲は10キロ圏内に制限されます。
飲食店およびホーカー(屋台)は、MCOの地域では、テイクアウトのみで営業できますが、CMCOおよびRMCOの地域ではSOPを順守の上で通常の営業ができます。
学校はどうなる?
マレーシアの新学期は1月20日から始まることになっていますが、教育省は、MCOの地域では、主要な卒業試験を控えた生徒のみ登校できると発表しています。
これらの地域では、小学生および中学1年生から4年生までは、在宅学習を継続するということです。私立の幼稚園は開園を認められています。営業が認められている産業で働く両親のための措置です。
CMCOおよびRMCOの地域の教育機関は、それぞれの学校のカレンダーに従って運営が可能になっています。
詳しい内容は、追って関係機関から発表されることになっています。
MCO期間中のビジネスは?
経済省のモハメド・アズミン・アリ上級大臣は、MCOの対象となっている5州および連邦直轄領は、国の経済活動の主要な駆動力であり、国民総生産(GDP)に最も貢献している地域(GDPの66.3%)だと話しています。
政府は、製造、建設、サービス、貿易・流通、プランテーション・商品の5つの必要不可欠な産業の事業継続を認めています。これについて、上級大臣は、国の景気回復過程、事業の持続可能性を確実にし、失業率の上昇を抑えることはもちろん、国民が生活必需品・サービスにアクセスできるようにするためだと説明しています。
マネジャー級の従業員は30%のみ出勤が認められています。また、生産ラインに関係するサポートスタッフおよび従業員の数は、雇用者がSOPの遵守を考慮したうえで決定することになっています。
実際にオフィスにいなくても継続できる仕事については、在宅勤務(ワークフロムホーム(WFH))となります。技術の発展やインターネットを活用し、ニューノーマルとしてWFHの実施を強化していくように産業界および民間セクターに呼びかけています。
上級大臣は、政府の先回りした措置が、国の経済成長、国内外の投資の流れ、ならびに中小企業の持続可能性に前向きな影響を与えるはずだと述べています。
(出所:CNA)
(トップ画像:Photo by Levente Balogh on Unsplash)
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